2006年03月26日

Your Song"D"mix。(キャラメルのネタバレあり)


 昨日の話。(キャラメルボックスの芝居『あした あなた あいたい』と『ミス・ダンデライオン』のネタバレ有り)


 友人Mと、大阪城公園側の劇場「シアターBRAVA!」で行われた、演劇集団キャラメルボックスの芝居を見に行ってきました。昨年末に行われた芝居『クロノス』の続編に当たる作品二本。1時間程度の短いお話を、2本続けて公演するキャラメル独自の「ハーフタイム・シアター」と呼ばれる興行であります。作品名は『あしたあなたあいたい』と、『ミス・ダンデライオン』。

 さすが人気劇団だけあって、チケットは即SOLD OUT。当日券が15枚だけ出るってんで、朝もはよから並びに行きましたよ。開演は2時。チケット発売はその30分前からということで、余裕を見まくって11時頃行ったらもう8人並んでた。慌てて後ろに並びましたがな! キャンセルもあって、最後にはチケットは30枚近くになり、1時くらいに来ても十分買えたんだけど、それはまあ結果論ってことで。


「ちゃーっす」
「おひさー」
「いや、さすがキャラメル。はよから人並んでんねえ。・・・あ、これ昼飯に買ってきたサンドウィッチ。オゴリでいいよ」
「おお! さんきゅー!!(モグモグ) しかし、いい天気だね」
「まったく。ひなたぼっこしてる感じで気持ちいいねえ」
「暖かくなってきたし、どっか行こうぜ。前からゆーとる縄文セッション&古代鍋もやってねえし! 今年はスキューバとボディボードの川版、鳥取砂丘でサンドボードなんざ狙ってるんですがどーよ?」
「ああ、いいねえ。僕も島根にあるっていう「トンカツパフェ」の店行きたいねんけど」
「トンカツパフェ? 清まるじゃなくて?」
「そんな名前やったかなあ。よー知らんけどツレが行ってけっこう旨かったって。今度登録商標にもなるらしくってさぁ」


 あとで調べたら、やっぱり愛媛は松山にある「清まる」のことっぽい。松山と松江間違ってない? あそこは俺も昔から気になってたし、行くならスキップして付き合いますが。松山城も見たがってたし、まあ、ちょうどいいっちゃちょうどいいわな。


「あー、ねむ。兄貴が昨日、俺の部屋の横で延々『三国無双2』やっててなー。寝れんっつーねん!」
「あ、それあれちゃうのん! マガジンに載ってるうさんくさい戦国バトルものみたいなキャラの格ゲー!」
「惜しい! そっちは戦国BASARA! あれめっちゃイカスで! 本多忠勝サイコー! 家康がちっこい少年でな! 「行けー! 忠勝!」って手のリモコン向かって叫んだら忠勝の目が光ってビーム発射」
「め、メカ!?」
「かっちょいー」
「そのうち三国無双と合併してKOFみたいなの出そうやな。『ブルー・ウルフ&ホワイト・・・牝鹿って英語でなんて言うんだ?」
「おお! 『蒙古無双』! やりてー!!」
「『蒙古無双』て、普通の人“四駿”とか“四狗”とか知らんから!」
「いやいや、だから『蒼き狼と白き牝鹿』路線ですよ。いいよなあ。リチャード獅子心王とサラディン、フィリップ尊厳王は固いとして、日本は頼朝と義経か?」
「ヒロインキャラで静御前と北条政子あたりですか。つか、フィリップ・オーギュストなんざ普通の人知らんってば」
「マジで!? メジャーやと思ったのになあ」
「中国は?」
「宋の時代やし、文弱ばっかやな。・・・文天詳とか?」
「うわ、知られてねーッ!」
「なにィッ!? 愛国の士と言えば文天詳か山中鹿之助ですよ! モンゴルはチンギスの息子たちですかね」
「トゥルイ、美少年キャラになるんやろうなあ」
「オゴタイは知性溢れる優男キャラで。チャガタイはやんちゃくれの粗暴キャラやろうなあ」
「ジュチはシニカルな影背負ったキャラか。おお、キャラ立ってんな」
「フリードリッヒ・バルバロッサも入れよう!」
「赤鬚王!マサカリ担いだパワーキャラか。ド定番やのう! 水に弱いぞ!!」
「うおお! マジでやりたくなった! CAPCOMか光栄、作ってくれー!!!」


 歴 史 に 興 味 な い 人 間 総 置 い て け ぼ り 。


 友人Mは同じ東洋史学専攻なだけに、マニアックな歴史ネタが通じてしまって非常に困る。歯止めが利かんのだ。そんな話を続けていると、いつの間にか時間は経って、気づくとチケット販売が開始されていた。


「どーするよ?」
「とりあえず、2階席のその、続きのやつ。それでいんじゃね?」

 二階席中央当たり。うまいこと続きになってた席を選び、3500円を払って俺たちは劇場内へと足を向けた。前も言ったけど、1時間のハーフタイム・シアターでS席4000円A席3500円はつらいですよキャラメルさん。二本で8000円。社会人たる我々はまあいいとして、学生さん達のことも考えて、せめて3000円くらいにならんもんでしょか?

 そんなことをブツブツ呟きながら、劇場にはいる。

 しかしいつも思うけど、キャラメルの芝居に来る人って年齢層は広いけどタイプ似てるよなあ。黒髪率が異常に高くて、みんな地味めな格好して。で、どいつもこいつも人が良さそうな人ばっかなんだ。リリパット・アーミー初めて行ったときは、普通のカップルがいっぱいいてビックリしたよなあ。ピスタチオはオタクっぽい奴ばっかだったけどな! 含む俺。


 そうこうしてるうちに、芝居が始まった。

 今回の芝居は、冬にあった公演、『クロノス』の続編。リリカルで、時に毒にも満ちた短編の名手と知られ、日本SF界を牽引した重鎮“カジシン”こと梶尾真治氏の連作短編集『クロノス・ジョウンターの伝説』所収の、残る2作品を原作とした公演である。


 一作目は「あした あなた あいたい」。原作でのタイトルは「布川輝良の軌跡」。

「布川輝良は友人と言える友人もなく、これといった趣味もない、マジメだけが取り柄の男。2007年12月。母を亡くし、天涯孤独となった彼は、時間遡航機クロノス・ジョウンターの実験に参加する。ただ一つ興味のあった建築家の、今はもう取り壊された最後の建築物『朝日楼旅館』をその目で見るために。

 ――そしてそこで、彼は彼女に出会った」


 なんてことないお話です。遡ったその先で、出会った女性との間に生まれる恋。彼女の婚約者や母親、母親の営む喫茶店、取り壊されようとしている朝日楼旅館、そして時が来れば30年先の未来にはじき飛ばされ、彼女と離ればなれにならざるを得ない布川輝良の運命。それら軸に話は進みます。大きなヒネリもありません。どんでん返しもありません。二人の思い、二人を取り巻く人たちの思い。それが絡み合い、時にもつれながらも、やがてキレイな結末向かって進み始める。


 あ ー 、 エ エ 話 や っ た ー 。


 涙ぐんじまったい。

 ちょっと2人の心の交流が少なかった気もするけど、それでもいいお話でした。も少し二人が話すシーンとか、見たかったけどね。2時間ものにして、クリスマス公演とかでやらないかな?

 さあ、テンションが上がって参りました。やはりキャラメルはいい! 最高だ!! カーテンコールの挨拶見るのもそこそこに、俺たちはまた当日券の列へと並んだ。ドヤドヤ。

「次、どうする?」
「一作目、良かったやろ? 二階席やとやっぱ浸りきれんし、バラけても一階で見ない?」
「俺もそう、思ってた」

 俺たちはニヤリと笑い合うと、一階席を購入し、別れた。終わったら出口のあたりでまた会おう。

 劇場へと再入場し、席へと座る。やがて照明が落とされ、劇が始まった。


 本日2作品目になるのは「ミス・ダンデライオン」。原作では「鈴谷樹里の軌跡」というタイトルになっている作品だ。


「横浜大学付属病院で働く医師・鈴谷樹里(すずたにじゅり)は、11歳の頃、小児性結核で入院していた。その時、同じく入院していた作家志望の青年・青木比呂志(あおきひろし)と出会い、「ヒー兄ちゃん」と呼んで慕うようになる。
 ヒー兄ちゃんは、幼い樹里に楽しいお話をたくさん聞かせてくれていた。しかし、ヒー兄ちゃんはチャナ症候群という難病のため、亡くなってしまう。
 19年後、樹里は、チャナ症候群に劇的な効果をもたらす新薬を手に入れる。
ヒー兄ちゃんを救うため、樹里はクロノス・ジョウンターに乗り込み、19年前の過去へと飛ぶ。」(TBSの紹介HPより)


 ・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。


 滂 沱 。


 うおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーッッッ!!!!!!!!


 来た! 来た! 来まくりやがった!! コレだ! これが俺がキャラメルに求め、演劇に求めてきたものだ!! うあー!! たまんねえッ! ああ、ガマンできねえッ!!

 そうさ。キャラメルの芝居見て、毎回泣いてるさ。でも、それは所詮「涙ぐんでる」レベル。「熱いものがこみ上げてる」レベル。いつ振りだろう? 頬を涙が伝ったのは。真っ暗で良かったと、こんな顔周りの人に見せられねえぜ!と安堵したのは。

 人も死なない、不幸にならない。完全無欠のハッピーエンド。なのに、涙が出るんだぜ? 嬉しくって、幸せすぎて涙が出るんだぜ? そんなの、ありえない。キャラメル以外じゃあり得ない! ああ、もう! もう!! 大好きだッ! キャラメル大好きだーーーーーーッ!!


 ぜえぜえぜえ。いや、ちょっと取り乱してしまいました。失礼。


 いやあ、初っぱなから涙腺ゆるみまくり。俺の涙腺の蛇口ゆるんでんなあ、と自分でも思ってたら、後半に入って蛇口壊れやんの。涙ずざざざざー。「ウェッヒグ!」なんて死にかけのカエルみたいな嗚咽がでやんの。抑えてんのにさ。周りの人ごめんなさい。

 カーテンコール。俺は、暗転した瞬間に顔を拭うと、本当に心の底から手を叩きまくった。叩いて叩いて叩きまくったが、本当は、それでもったく全然足らなかった。スタンディング・オベーションしたくてたまらなかったくらいだ。朝、出かけるのダルいなあ、なんてほざいてた自分をぶん殴りたい気分だ。ハーフタイムなのに4000円なんて高すぎですよ、なんて言ってた自分を正座させて説教してやりたいくらいだ。2億円だって高くねえ。


 いや、いいもん見せて頂きました。


 パンフにも書いてあったけど、今回は「クロノス」は原作つきなのに「昔のキャラメルの芝居みたいだった」と言われたそうだ。俺も同感だ。

  キャラメルの処女作にして代表作、「広くて大きな宇宙じゃないか」を見て演劇に目覚めた俺である。実際に劇場に足を運ぶようになったのは大学を卒業してからだったが、それでも気づけばもう、10年近くキャラメルの芝居を見てきた計算になる。「ワンパターン」「ありがち」「ご都合主義」といった批判も受けるキャラメルの話だが、それでも、やはり新作には他の作品とは違う新機軸が盛り込まれている。それは新鮮さを演出するには入れざるを得ないスパイスだが、やはりそんなものを入れてなかった初期の作品のストレートな味わいは、力強くて格別だ。

 今回のお話は、そんな初期の頃の味わいを、「みそ汁とご飯」みたいなひねりもなんもなしの、ド直球ストレート!みたいな味わいを、思いっきり楽しませてくれる作品だった。

 ああ、だから芝居を見るのは、キャラメルを見に来るのは止められない。



 超絶に満足して、俺たちは梅田の方へと向かった。こみ上げるこの思い、語らずにはおらりょうか! お腹も空いたしな!

 梅田の街を軽くさすらうこと30分。前から食いたかったジンギスカン屋を見つけ、そこで食うことに決定。いやあ、初めて食うよジンギスカン。『蒙古無双』ですよジンギスカン。その話題はとっくに終わってますかジンギスカン。


 モリモリモリ。


 ンま~い! うわー、不思議な味がする! なんか、玉子つけたスキヤキの肉みたいな味! 全然分かりませんかそうですか。いやでも美味しいよコレコレ。

 モリモリモリ。ぷふー。で、これからどうする? 飲み直す? そうねえ、あの北海道居酒屋は? 満杯? 待ち30分。待てるか! どこにする? カラオケでもいいよ? なに? M先輩に聞いてみろ? そろそろ帰ってるはず?

Trrrr・・・ガチャ。

「あ、どもM先輩! カラオケ行きませんかぐひゃひゃひゃひゃ!」
「あ!? おまえら今大阪ちゃうんかい! こっちまで来んにゃったら行ったるわい!」
「おお!? マジですか! なら行ったらー! 30分で三ノ宮着くから首洗って待ってやがれー!!」

 キャラメルパワー満載の俺に、今出来ないことなどナニもない! パワーの使い道をだいぶ間違ってる気がするが!


 そんな感じでカラオケ行って、も一人先輩呼び出して騒いで帰りました。帰りあやうく姫路行きの新快速乗りそうになったりしながらも、なんとか帰宅。1時過ぎでした。今日の会社眠かったー。


 いやあ、やっぱキャラメルはサイコーだぜ! 女医さんもいいもんかもしれんな! オーナー、この前「紹介してくれる」って言ってた女医さん、鈴村樹里みたいな子だったら紹介して!

「誰ですそれは?」

 話せば長くなりますが。

「どれくらい?」

 そうですねえ。ざっと、50年ほどの愛の物語でしてね・・・。


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