2010年02月21日

【ネタバレ有り】キャラメル「南十字星駅で」を見てきたよ!


【ネタバレ有り】キャラメル「南十字星駅で」を見てきたよ!

 大阪サンケイホールブリーゼまで、俺の愛してやまない劇団「演劇集団キャラメルボックス」の芝居、「南十字星(サザンクロス)駅で」を見に行ってきたよ!

 サザンクロスっつーても、超時空騎団や南斗聖拳の使い手は出てこない。これはキャラメルがここ数年公演してきた、梶尾真治氏原作の連作短編「クロノス・ジョウンター」シリーズの完結編とも言うべき物語である。――って、当たり前ですかそうですか。


 ストーリーは例によって簡単。


━『南十字星(サザンクロス)駅で』━

2051年3月、野方耕一は57年前へ飛ぶ。
57年前に事故で亡くなった、萩塚敏也を救うために。

元エンジニア・野方耕市(のがたこういち)は、79歳。ある日、熊本の科幻博物館から、収蔵品の修理を依頼される。それは、43年前に自分が開発した、クロノス・ジョウンターだった。修理するうち、野方の脳裏に青年時代の記憶が蘇る。大学4年の夏、野方は親友を失った。名前は萩塚敏也(はぎづかとしや)。萩塚は屋久島で沢登りしている最中、鉄砲水に流されて亡くなったのだ。萩塚に屋久島行きを勧めたのは、野方だった……。萩塚と最後に会った日に、もう一度行こう。野方はクロノス・ジョウンターに乗り込み、57年前の過去へと飛ぶ。

[出演]西川浩幸/坂口理恵/岡内美喜子/畑中智行/三浦剛/左東広之/渡邊安理/多田直人/原田樹里

ぴあの紹介ページより)



 以下、ネタバレ有りまくりの感想。


 うん、面白かった。

 さすがはキャラメル。西川さんをはじめとする役者陣の安定した演技と演出はさすがだし、話も堅い。脚本の成井豊さんも解説で書いておられたが、今回の話は、まさに「クロノス」シリーズの総括と言える作品だったろう。

 クロノス・ジョウンターの制作者として、第1作の「クロノス」の時から、一貫して皆を止める立場だった野方耕一。

 その彼が、ついに本作でクロノス・ジョウンターに乗り込み、過去を変えようとする。「クロノス」の吹原和彦や、「ミス・ダンデライオン」の鈴谷樹里など、多くの者達が思いを込めて旅立つ姿を「見送る」立場だった野方が、自ら旅立つ立場に――彼らと同じ思いを共有する存在となったのだ。

 戻った過去で、老いた身体に苦しみながらも、なんとか目的を果たす野方。

 そして、現代に帰った彼は、クロノス・ジョウンターに最後の改造を施す。十数年後に現れるであろう、第1作「クロノス」の主人公吹原和彦に、その思いを叶えさせるための改造を。

 かくして物語は第1作「クロノス」へと、また帰っていく。「大切な人を救いたい」。変わらぬその思いを乗せて。


 あー、エエ話であり、いいシリーズでしたわ~。


 今回の話にだけ限れば、ちょっと盛り上がりに欠けた感はあった。「きみがいた時間 ぼくのいく時間」の時も思ったけど、初期三篇と比べると、明らかに障害が少なく、やきもき感に欠ける。

 自分としてはその分、出来れば、彼が護ろうとしたもの、そして護ったものがどれだけはかなく、かけがえのないものであったかという描写を入れて欲しかった。

 「青春時代が夢なんて 後からほのぼの思うもの」。年を経るだに、この歌の文句が胸に迫る。

 今回野方が助けたいと願った親友萩塚と、高校や大学時代にどんな風に過ごし、親友となったかって話や、初恋の相手珠貴に心惹かれるキッカケとなったエピソード、そして彼が救った萩塚と珠貴が、その後「南十字星の下で」どんな人生を過ごしたか、など、そういう描写があれば、野方への感情移入も増し、そして、それを護れたのだということが判明したときのカタルシスも増したと思うのだが……。

  まあぶっちゃけ、俺が「過去を振り返るお年寄りモノ」が好きで、超弱い、というのだけなんだけどなっ。

 タイムパラドックスにたいする説明も放り投げて、あっさり記憶を残したまま、萩塚と珠貴が生きている未来に帰ってきたというのも、違和感を感じたなあ。

 ハーフタイム・シアターという、時間的制約のある1時間の小編なので、全部の説明は出来なかったろうし、細かい描写も難しかったんだろうとは理解してるし、仕方ないとは思っているんですけどね。


 それにしても、この物語をとりまく現実もまた、この物語にふさわしい。


 5年前、キャラメルボックス設立20周年記念作品として幕を開けたこのシリーズが、設立25周年記念作品として今、完結したこと。

 そしてなにより、今回の芝居「南十字星駅で」自体が、原作者の梶尾真治氏が芝居をご覧になったさい、脚本家成井豊さんが付け加えた「野方耕一が手放さない、かつて片思いをしていた女性のシャープペンシル」にインスピレーションを得て、書き下ろした作品だということ。

 物語の主人公達が過去へ飛び、その真摯な思いで大事な人たちを取り戻し、新たな未来を形作ったように、キャラメルボックスの芝居が梶尾真治氏の心を揺さぶり、新たな物語を導いたのだ。

 人の思いが、また別の人の心を揺らし、ちょっと素敵な「なにか」を運んでくる。

 ああ、そうですよ。

 うん。

 キャラメルを見に行くたびに、俺の心にも生まれてくるそんな「なにか」。

 それを受け取るために、俺もキャラメルの芝居に足を運んでいたんだった。

 俺が今までキャラメルからもらい、ささやかながら、周りにもお裾分けしたいと思うもの。

 例えるなら、春の日の木漏れ日のような。

 そんなものを再確認させてくれるような、お芝居でした。


 あー、しかし、こうなるとやっぱ『ミス・ダンデライオン』も見とけば良かったって思うなあ! 再演だし、2作とも見ると8,000円かかっちゃうので、ちょいとお財布に厳しい。そう思って今回はパスしたんだけど、やっぱり1作見ると、見たくなるんだよなあ。

 しかも、『ミス・ダンデライオン』、ここ10年のキャラメル作品の中でも、1番のお気に入りだし。

 一度見た作品は、二度と見返さないタイプの俺が、DVD買っちゃうほどのお気に入りだし。

 うおおおおー!!!! やっぱり見ておけば良かったー! 12時間ほど前の俺のバカー! なんでそんなこと考えちゃったんだー!


 野 方 さ ん ク ロ ノ ス ・ ジ ョ ウ ン タ ー 貸 し て く だ さ い 。


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