2009年06月04日

五右衛門ロック!


五右衛門ロック!

 ※劇団新感線の芝居『五右衛門ロック』のネタバレ有り。


 大阪まで劇団新感線のゲキ×シネ『五右衛門ロック』を見に行ってきた。

 ゲキ×シネというのは、演劇を録画したものを、映画館で上映するというシロモノである。チケットもなかなか取れない人気の演目を、劇場の大画面で臨場感たっぷりに堪能できるというなんともありがたい試みなのだが、これが一つ、巨大な欠点がある。演目が面白ければ面白いほど、「うおおお! 本物を見たかったぜえええ!!!」と、その辺をゴロゴロ転げ回って悔し涙をジェット噴射してしまうのだ!

 でも、今回は大丈夫! だって俺、本公演の時、『五右衛門ロック』見に行ってるから! 2階席の端っこだったけど! これで今回は心おきなく、ゲキ×シネが楽しめるぜぇぇぇい!!!


 で、感想なんですけど。


 おもしれぇぇぇぇいい!!!

 本番見に行ったときも思ったけど、やっぱりおもしれぇぇぇぃいいい!!!!

 まず役者がいいよな!

 演技がいい。滑舌がいい。動きがいい。バテたりしない。セリフ忘れたりもしない。歌も含めて、声の通りがいい。基礎の基礎が、もう文句のつけようなくかっちりできている。そして。

 古田新太の「男」というもの。バカでエロでだらしなくて、けれども頼れる五右衛門の、「男の魅力」を余すところなく演じきっている。

 松雪泰子の伝法な魅力。色っぽいけどはすっぱで、器量はいいけど、抜けてるとこもあって。目的のためなら手段を選ばぬ「ワルい女」。でも憎めない。そんな「女」がそこにいる。

 江口洋介の気持ちよさ。卑怯なことは大嫌い。ただひたすらに五右衛門を追い、うじうじと悩む輩を笑い飛ばす。ギターのシーンで思ったけど、江口洋介って、いい笑顔するよなあ。

 そしてなにより北大路欣也様ですよ! 北大路欣也様! ええ、もう「様」つけちゃいますよ!


 すごすぎだぁぁぁ!!!!


 あれが「名優」というものか! 声が違う。動きが違う。そういったものを飛び越えて、ただひたすらに「格」が違う!!

 威風辺りを払う。ものすごい目力だけじゃなく、体中からあふれでてる「なにか」があるのよ! あと、ぜひ言っておきたいんだけど、北大路欣也の声は、公演を見に行ったあのときの方が、絶対に響いてた。このゲキ×シネで流されているものは、直接マイクで週音したものなんだろうけど、それでも言わざるを得ない。絶対、あのときの方が声が響いてて、大きかった!

 思い出補正は、あると思う。それでも、見てる人間にそう錯覚させるほど、北大路欣也の声は、演技は、すばらしかったんだ。

 あ、そうそう。細かい話だけど、北大路欣也がまとっているマントの翻りっぷりが半端じゃなかった。2階席という「上」から見てたんでよけい感じたんだろうけど、立ち回りのシーンだけじゃなく、日常シーンでも、こう、ふぁさぁッ!って感じで、円を描いて、大きく、そりゃあ美しく翻ってんの! たぶん、そういうとこも計算しての動きなんだろうなあ。立ち居振る舞いや所作の端々までが美しい、そんな役者さんでした。すごすぎる。


 え? 話? ルパンですルパン。すげーよくできた「ルパン三世」。(笑)


 女好きでおっちょこちょい。派手好きだが腕はべらぼうに立つ、天下の大泥棒石川五右衛門。

 威張り腐った太閤秀吉の鼻を明かそうと、城へ忍び込み、ちょんまげを切り取ってやったはいいが、秀吉激怒。その勘気を恐れた京都所司代の卑劣な策により、捕えられ、釜ゆでの刑に処されたが、どっこい実は、生きていた。

 その手引きをしたのが、謎の女「真砂のお竜」。

 盗人家業がバカらしくなった、足を洗うと言い出した五右衛門だったが、お竜に見事乗せられて、南の果てにあるという神秘の石“月生石”を求めて船出する。しかし、彼らを追う、京都所司代の堅物熱血漢「岩倉左門字」もろとも、猛烈な暴風雨に襲われ、難破してしまった。

 だが、はからずも五右衛門たちが流れ着いた島は、求める“月生石”の産地、タタラ島だった。

 タタラ島は、恐るべき武勇とカリスマを持つ王「クガイ」によって、恐怖によって統治されていた。クガイの配下に捕らえられ、あわや処刑されそうになる五右衛門と左門字。そんな二人を救ったのは、不意に起こった動乱だった。


 クガイの支配を覆し、王座と“月生石”を我がものにせんと企むボノー将軍とその妻シュザク。

 クガイの息子でありながら、「母の敵」と彼を呼び、ボノー将軍とともにクガイを狙うカルマ王子。

 ちゃっかりやっぱり生き延びて、クガイにいつの間にか取り入っている真砂のお竜。

 そして、裏で暗躍する南蛮の武器商人ペドロとアビリャ。


 一癖もふた癖もある登場人物達が、“月光石”をめぐって大騒動。はたして、“月光石”の謎とは? そして、クガイの真意とは?

 果たして、五右衛門の運命やいかに! 釜茹上等! 盗んでGO! 今、大冒険の幕が上がる!


 みたいな感じです。

 最後まで見てもらったら分かるんだけど、ホント、ルパン三世なのよ。(笑) それは本人たちも承知のお遊びらしく、インタビューで古田新太自身が

「この作品は、北大路さん(北大路欣也)と未來くん(森山未來)の話が芯になっていて、タイトルは『五右衛門ロック』だけど、『五右衛門ロック』っていう漫画の番外編みたいな感じで、五右衛門は事件的な問題でいうと何もしてないんですよね。その中でオイラとえぐっちゃん(江口洋介)の役っていうのは、ずっと昔から追いかけっこしてたっていう、本当にルパンと銭形警部のような関係で、メインストーリーから全然ずれたところにいる。だけど、オイラたちが出てきたらお客さんが賑やかな気持ちになればいいなって」

――松雪さんは"色っぽさ"と"強さ"を兼ね備えた、まさに峰不二子的な女性(お竜)に挑んでいますが、役作りで何か意識されたところはありますか?

松雪泰子(以下、松雪)「五右衛門とお竜はシーンを展開していく中での狂言回し的な存在なので、舞台に出たらパっとシーンが変わっていくような登場の仕方ができたらいいのかなって考えていました」

って言ってる。
マイコミジャーナルのインタビューより)


 もう、次のルパンは中島かずきに書かせるべきだと思うんだ。熱くて女に弱くて、でもかっこいい、最高のルパンを書いてくれること、間違いないのに!

 つか、中島かずき、本業はルパン出してる双葉社の編集で、クレヨンしんちゃんの映画のチーフディレクターやってるくらいだから、マジで可能だと思うんですけど。なんでやらないの? やってくれよお!


 閑話休題。


 まったく、中島かずきの脚本は俺にとっていつでも1000%だぜ。予測して、期待してた展開の、遙か上を行ってくれやがる。しかも熱くておもしろい上に、気持ちよくって胸に残るんだ。なにこの神脚本。

 本当に面白いよなあ。また、ただ面白いだけじゃなく、「生と死」をからめた、胸に刺さるシーンを入れてくるところもすばらしい。


「人は生きて、死ぬ」


 あの歌は、本当に聞く度に俺の心を波立たせてくれる。

 あと特筆しておきたいのは、場面転換を分かりやすくするために張られた、さりげない伏線と、その回収のすばらしさだ。

 バナナ少年がバナナ型のビックリ銃で皆を驚かすシーンや、鉱山での五右衛門の変装。ただの軽いギャグだと思ってたら、あれが伏線だったとは! でも、特に鉱山での変装がそうだと思うんだけど、前のそのギャグシーンがなければ、あとのシーンがで使われたとき、唐突な印象を受けただろうし、なにより「引き立たなかった」と思うんだよね。

 前のシーンがあったればこそ、後のシーンで使われたときも、観客は「ああ! あの時の!」とすぐ理解できる。だから、バナナ少年の銃や五右衛門の変装を、テンポの速い、言うなれば「情報量の多い」シーンで、説明なしで使うことができる。そのことがあの鮮烈な印象を産んでいると思うのだ。すげえ。

 ぶっちゃけ、第一部はちょっとかったるい感じでしたが、第二部に入ってからは怒濤の展開。テンポ、演技、次々に謎が解かれていく興奮とであわあわ言ってるうちに大団円!

 笑えて泣けて拳を握って、そりゃあもうすてきなお芝居でした! おもしろかった!!


 それはいいんですが。


 最初に書きましたよね?

 ゲキ×シネには一つ、巨大な欠点がある。演目が面白ければ面白いほど、「うおおお! 本物を見たかったぜえええ!!!」と、その辺をゴロゴロ転げ回って悔し涙をジェット噴射してしまうことだ。でも、今回は本公演見に行ったことのあるやつだから、大丈夫って。


 訂正します。


 本 公 演 見 た こ と あ る 奴 で も 悔 し い 。


 本公演もっといい席で見たかったよおおおお!!!!! うがあああああ!!!!


 とゆーわけで。本公演、見てても見てなくても悔しく、でもそれ以上に超楽しいゲキ×シネ! 悔しいけどおもしろい!

 また行くぜ!

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