2007年10月15日

朧ボロボロ。


 地元の友人と4人で、ゲキ×シネ第五弾劇団☆新感線『朧の森に棲む鬼』を観に行ってきました。

 ゲキ×シネとは、演劇のDVD制作/販売などを手がけるイーオシバイによる、過去に公演された演劇の、映画館での上映会である。もともとが演劇のDVD制作を行っている団体の作った「分かってる」映像を、しかも映画館の音響設備と大画面で観られるとあって、こりゃもう芝居好きには堪えられないイベントであるのだウヒヒ。

 今回の演目は『朧の森に棲む鬼』。劇団☆新感線と松竹がタッグを組み、主演に歌舞伎俳優市川染五郎を迎えて、2007年新橋演舞場正月興行として開催されたというバリバリの新作である。


 ストーリーは以下。

『それはいつともしれぬ昔。そして、どこともしれぬ島国。
累々と重なる死人の山から、一人の男が現れる。
名をライ(市川染五郎)。
どんな嘘でも瞬時に仕立て上げるその「口先」と、弟分・キンタ(阿部サダヲ)の腕っぷしとを武器に、漂うように世の中を渡ってきた男。
野心に充ちた、その獣のような瞳は、自らの力でこの世にのし上がることだけを、ひたすら夢見ている。

そこは朧の森。
いにしえの神々が棲む、神秘の森──。

「かなえてあげようじゃないか。それにふさわしい男の望みなら」

突然ライの目の前に、この森の魔物たち──オボロが現れる。
ライの望み……それはこの国の王になること。
見返りにオボロたちが求めたものは……ライの命。

「おもしれえ」──ライは、その取引に乗った。

何処からか取り出した一本の剣を手渡しながら、オボロが言う。

「その舌先が動くように、その剣は動く」
「今からここに現れる男を殺しなさい」
「それが、あんたが王になる最初の一歩」

そうして、血塗られたライの戦いが始まった。』
(公式HPのストーリー紹介より)

 有り体に言うと強烈な野心を持った男が、口先三寸と魔剣とを武器にのし上がり、破滅していく姿を描いたピカレスク・ロマンである。


 いやあ、面白かった。


 以下、ネタバレを挟みつつ、感想。観る予定の人は、見ないで下さい。


 この日、睡眠時間2時間だったんで、つまんなかったら寝る。確実に寝る。面白くても中だるみなんかしやがったら即寝ちまうぜお願いしますよコンチクショウ、という状況で行ったのだが、いやいやいや! 眠くなるヒマなんざありゃしねえ。一分一秒たりとも目が離せませんでしたよ! さすがは新感線。脱帽。

 まずは、やはり主演の市川染五郎がいい! 失礼ながら声自体はそんなにキレイじゃないし、滑舌も良くはないのに、「届く」んだよなあ、声が。

 セリフは膨大。3時間の長丁場を、常にしゃべり続けと言っても過言じゃない。しかも「口先三寸」が武器のキャラとあって、立て板に水のテンポいい口上が求められるのに、ほぼトチらない。間違えない。基本の基本だけど、とちった瞬間、見てる方は冷めてしまうだけにここは重要なとこだ。

 活劇シーンも多く、それがまた激しく、強いのに、声が乱れたりかすれたりもしない。またこの殺陣がねえ。激しく、早いんだ。刀も、ちゃんと当ててたよな? あんだけ迫力のある殺陣は久々に観ました。

 所作の美しさ、緩急自在で目を惹く動きは言うに及ばず。演技力もな。のし上げるにつれ、どんどん貫禄を付けていく様や漂う狂気、細かいところでは、「魔剣が勝手に動いてオタオタ」みたいなシーンも、ちゃんと違和感なく感じられてスゲエな、と。

 そんなこんな全てをひっくるめて、目を惹きつけてやまない魅力がありました。これが「花」か。

 また、その脇を固める俳優陣が実力陣揃いなワケですよ! 準主役のキンタを演ずる阿部サダヲは、笑わせて泣かせて歌って暴れて。まさしく三面六臂の大活躍。2部の再登場時にはシビれたなあ。盲目になっての登場が、ちゃんと“盲目っぽく”見える。粟根まことと同じく、謎の動きと過剰なリアクションで沸かせる系の俳優と認識してたんだけど、とんでもない。みくびっておりました。あの演技力あってこその“笑い”なんだな。

 一方、同じ方向性のハズの粟根まことの見せ場の少ない事よ・・・。キャラメルに客演来た時には、あんなに動きまくって笑わせまくってたのにー!!! もっと俺に粟根まことを見せろろろロロロシアンルーレットー!!

 古田新太は今更言うに及ばずですね。なんでしょう、あの全身からしたたる「男汁」は。格好良すぎる。また、下っ腹に響く魅惑のバリトン・ボイスと、ゲキ×シネだから見えるあの凄絶な視線と目力な! ありゃあ、3人は殺してるね!(おいおい) しかし、本当に太ったなあ。おかげで伊藤えん魔とキャラがかぶって困ります。いや、別に困りゃあしねえが。

 イチノオオキミ役の田山涼成も良かったなあ。最後のシーンにはホロリときました。その名演に響く、シキブ役の高田聖子の狂気な。ホント、新感線の役者にハズレ無しだなあ。あと、シュテン役の真木よう子は美人だと思います。凛とした将軍萌え。


 そして、それらの豪華役者陣を縦横に使いこなしたイノウエヒデノリの演出と中島かずきの脚本の見事さよ!

 舞台の上に本物の滝と雨を出現させる奇想天外さ! 殺陣! 客席を巻き込む演出! そして、酒呑童子伝説を下敷きにしながらそれを換骨奪胎し、完全に別の作品として昇華させる手腕!!

 『髑髏城の七人』観た時も思ったけど、人間としての深みが違う。スケールが違う。観てて「ここちゃうやろ!?」とか「ここ、こうした方がオモロイやん!」とか、話の矛盾に「?」ってなることがほとんど無かったもんなあ。シュテンの「自分の体を使った」血人形の下りくらいか? あれはいらんかった気がする・・・。


 いや、面白かった。


 しかし、なんですな。前の『髑髏城の七人』をゲキ×シネで観た時も思ったけどさ。


 ホンモノの舞台で観てエエエエエエeeeeeeeeee!!!!!!!!!1111


 やっぱりさあ、音や匂い、まわりの人のざわめきなんかも合わせて“芝居”なワケじゃないですか! どんなに良くできた「映像」でも、そりゃあやはり現実のよすが。残り香みたいなもんですよ!

 まあ、現実の芝居だと、2階席とかで、こんな表情分かるほど良く見えないんだけどね。芝居観に行って、気に入った芝居をゲキ×シネでもう一度見返すってのが一番幸せかもなあ。ピスタチオのDVD BOX発売ん時のイベントは幸せだった・・・。


 とゆーわけで。


 ホンモノの舞台で最前列で観てエエエエエエeeeeeeeeee!!!!!!!!!1111 友人S、チケット取り頑張ってー!!←結局人任せかよ


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