2007年11月17日

一刻を千金づつにしめあげて 六万両の春の曙。(P)



 姫 子 ち ゃ ん は 俺 の 嫁 。



 と、お約束の宣言をカマしたところで。(本気だけど)

 先週の土曜日(だっけ?)、大阪のHEP HALLまでピースピットの芝居、「呪いの姫子ちゃん」を見に行ってきましたよ!

 ピースピットはかつて佐々木蔵之助や腹筋善之助といった錚々たるメンバーを擁し、関西演劇界に超新星のごとき光芒を放って消えた伝説の劇団「惑星ピスタチオ」に在籍し、今は自ら作・演出をこなす舞台役者末満健一氏の主催する、演劇ユニットである。


 ストーリーは以下の通り。

「みんな大嫌い。

これは昔々あるところに……からはじまる少し切ない恋のお話。
現実と御伽噺がまだ地続きだった頃、現実と御伽噺のちょうど真ん中に小さな国がありました。

その国は呪いの姫子ちゃんという名のひとりの魔女によってそれはそれは苦しめられていました。姫子ちゃんはなぜか国中の人を憎み、人々に呪いをかけては不幸に陥れていたからです。国中の人が姫子ちゃんのことを嫌っていました。

(中略)

そんなある日、姫子ちゃんの住むイバラの城に謎めいた青年が迷い込んできます。それは、この国の跡継ぎで生まれながらにして目の見えぬ、盲目の王子ニコでした。呪いの姫子ちゃんと盲目の王子の出会い。その出会いによって、姫子ちゃんに隠された呪いの秘密が少しずつ明らかにされていくのですが…。」
(チラシより)

 以下、ネタバレを挟みつつ、感想。

 ハイ。めちゃめちゃオモロかったです。

 末満ワールド満開の、ゴシック・ファンタジー。派手で楽しく、蠱惑にダーク。馥郁たる香りと暖かさに満ちた春の夜のような物語でした。ホント、末満健一の芝居って、夜桜みたいだよな。絢爛豪華で艶やかだけど、根本には死体が埋まってんだ。誰の死体かってーと、本人の死体なんだけど。(過労死)

 ストレートだけど、一筋縄ではいかない恋物語。王道の話に、凝りに凝った衣装と舞台装置。そして各劇団の看板級を取揃えた豪華役者陣。ひやー、凄いわ〜。

 まずですな、姫子ちゃん役の三谷恭子さんが超絶に可愛いわけですよ! 三谷さんは俺の(以下略)。端々にあふれる「あどけなさ」。3時間ずっとしゃべり通しの動きっぱなしなのに、かすれもしないし疲れも見せない脅威の体力と魅惑のボイス。

 そして主役の赤星マサノリ氏の、反則なまでの正統派王子様っぷり。なにあの80年代少女雑誌に出てきそうなリアル王子さまっぷりは!? ホントに同じ人類!? 4割の畏敬と6割の妬みを込めて喝采を送りたいと思います。あとひがみとそねみが7割ずつな。

 そして、脇を固める皆様も細かな動き一つで目を奪う、花のある方ばかり。誰見たらいいか困るっちゅーねん。

 姫子ちゃんの撲殺天使なダンスをはじめ、踊りも華麗。ノリもいい。得意の観客いじりまで飛び出して、見終わったあと、ニヤニヤ笑って帰れるエンターテイメントな芝居でしたよ! 観客いじり、不発に終わってたけどなっ!


 ことほど左様に楽しい芝居でしたが、不満もぼちぼちあるわけで。


「長いなー!」
「うん、長い。女性はトイレ困ったでしょうなあ」
「いつも思うんだが、末満の芝居は、2時間に凝縮したら、どれだけ傑作になるだろうかと」
「元は、もっと長かったらしいよ?」
「あれよりー!?Σ( ̄□ ̄;」
「無駄なシーンと登場人物が多すぎると思うんさ。正直、宮廷司祭長とその召使いの話は丸々要らなかったと思わね? シスター・スノウを影で操る黒幕かと思ったら、同格のタダのボスだし。司祭長、末満本人の役だけど。アレ削るだけで40分は短縮できるぞ」
「思うねー」
「物語の開始時に3回に渡って姫子ちゃんの城が勇者に襲われてたけど、あれも1回でいいだろ。意味のない繰り返しや、キャラかぶりが多すぎる!」
「“本当は皆の幸せを魔力に換える魔法力の持ち主”って設定、もっと使って欲しかったな」
「ああ、あれは最後の星を打ち返すシーンで使って欲しかった! みんなの応援が力になって、それで星を打ち返すって演出ね! ベタだけど燃える!!」
「『その呪いごと抱きしめてやる』って決めぜりふも、言うのはやっぱりニコだけであって欲しかったな。百歩譲ってもメフィストまで。ピノが言うって、アンタらそんなにからんでないやん!って」
「ロットンには伏線が欲しかったなあ」
「観客いじりも、先に解説入れて欲しかった。切られたらこう反応するんやで〜って解説があったら、反応できたのに!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! 最前列ど真ん中だったおかげで俺切ってもらえたんだよー! 反応できなかったんだよー! ああもう、せっかく切ってくれたのに! 口惜しくて今日、夜寝れんっちゅーねんうわーん!!」


 等々。帰りの道すがら、延々話題は姫子ちゃんのことばかり。語りも語ったり、2時間半。はっはっは。


 ど ん だ け 末 満 好 き な ん だ 俺 た ち 。


 正直、まだ語り足りませんよエエ!

 しかし、ピースピットもvol.8。着々と進化しておりますね。初期の頃はだいぶつたなく、主催の末満氏自体が舞台上でわたわたテンパッてる気配が伝わりハラハラしたものですが、今回の芝居じゃ堂々たるもので。若手の踊り子さんや、お客をいじる余裕まで! いつもいじられる方だったのに!

 まあ、それも演技だったのかも知れませんが。


 夢オチの多かった話も綺麗にオチが付けられるようになり、演出も安定して手慣れた感が漂うようになりました。お得意のオタクネタも、「分からなくても面白い」みたいな、巧みな使われ方になってきている気がする。・・・だいたい分かるから、定かじゃないけどなっ。

 作家の長野まゆみさんが、前にインタビューで「自分の作品は、分かってくれる人だけ読んでくれればいい。分からない人は、まったく分かってもらえない話ばかりだから」みたいな言葉を語ってらしたんですが、昔のピースピットの作品にもそういう気配が漂ってた気がします。ただそれは意図したものではなく、自分の中にある“モノ”を形にするのに必死で、そこまで気も手も回らないゆえだったのではないかと、勝手に思ってるんですが。

 それが最近では「自分が求める芝居」だけでなく、「観客をいかに楽しませるか」という視点が強く入って、どんどん「開かれてきた」感じがしています。それは回数を重ねたが故に産まれた“余裕”のなせる技なのかも知れませんし、末満氏の心境の変化によるものかも知れません。

 怒濤の進化を続けるピースピット。その行く末に、一体どんな世界を見せてくれるんでしょうか。


  春宵一刻値千金
  花有清香月有陰


 願わくば、爛漫の花を見せてくれんことを。

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