2007年09月06日

『愛媛トンカツ紀行 第四篇』。


『愛媛トンカツ紀行 第四篇』。

「愛媛トンカツ紀行 〜東奔西走右往左往。トンカツ食ってウマかった〜 第四篇」


 清まるへの2度目のチャレンジはあっさり成功した。車を店舗裏手の駐車場へ停め、俺たちは店へとはいった。

 メシは昼に食っただけ。時間はもう17時を過ぎていた。この腹具合では、トンカツパフェだけじゃ物足りない。そこで、定食も一緒に頼むことにした。なんだか間違ってる気もするが、きっと気のせいだな。

 さて、よーやく今回の旅行のメインイベント、「トンカツパフェ」の登場である! トンカツパフェとはなにを隠そう、トンカツのパフェのことである! そりゃそうだ!

 その出現に、俺たちは息を呑んだ。抹茶アイス、リンゴ等が盛られたパフェに、10枚以上のトンカツが突き刺さる。なんてシュールな光景だ。わざわざ一度揚げたてのカツを常温で冷ましてから盛りつけるため、出てくるまで30分近くかかるというこだわりの品。このトンカツを指で鷲づかみにし、アイスとリンゴを乗せて食うのがこのパフェの食べ方だ。当然指が汚れるので、指を洗うためのフィンガーボールが着いてくるのだが、時々このフィンガーボールの水を飲むというバカが出現するのが侮れない。

「道理でただの水だなあと思ったんです」(MADさん談)


 それはいいのだが。


「うーん、・・・びみょ〜」


 楽しみにしてきた、今回のメインイベント「トンカツパフェ」。そのお味は微妙であった。マズくはない。しかし二度食おうとは思わない。それなりのお味でありました。無念。

 しかし。


「この定食めちゃめちゃ美味いな!」


 そう、しかしここのトンカツ定食はどれも絶品揃いであったのだ! 福井でソースカツ丼食った時も思ったが、旨いトンカツってのは油が後に引かない。胸焼けもしないし後口も残らない。

 ここの女将は研究熱心で肉にもこだわり、油にもこだわっているので有名だ。トンカツパフェやトンカツケーキなどのお遊びメニューやブログにも、その熱心さと過剰なまでのサービス精神はあふれている。そんな店のメニューが美味くないわけがないわな。

「これは・・・しかし」
「うむ。遅れてきて大正解でしたな!」

 昼にあのまま食ってたら、この定食は食わないままだったろう。であれば、俺たちはメインイベントで不満を抱えたまま帰ることになったってわけで。

「やっぱ俺たちってツイてるぜ!」
「昼間のライダー達センキュー!」


 ど こ ま で 幸 せ な 奴 ら な ん だ 。


 その後、道後温泉に入り、街で開催されていた夏祭りに猛烈に心引かれながら帰還。瀬戸大橋を渡って一路神戸を目指す――はずだった。

 ところが。橋を渡り、あとは山陽道目指して突っ走るのみ!となったところで、我々は電光掲示板に衝撃の一文を発見したのである。


「事故にて神戸〜姫路間は一部通行止めになっております」


 なんたるちゃー!!

 どこが通行止めなのか。どこまでなら行けるのか。高速の集金所のおっちゃんに聞いても分からない。交通ラジオの周波数も知らない。困ってしまってワンワンワワンなわが輩達である。さあ、どうする。

 ここで、我々は決断した。大回りになるが中国道を走って帰ろう、と!


「ぶわははは! ちゅ、中国道て! 俺、明日の岡山洞窟探検ツアーでここ来る予定だよ! 同じ道走ってやんのぶわははは!」
「遠回りになんなあ。MADくん、終電何時やっけ?」
「神戸発で23時45分くらい」
「今何時?」
「23時」
「「「ぶわはははは!!!!!!」」」

 最後に! 最後に来てこんなトラブルが! 来た! きまくりやがりだ! 一気に車中のテンションが上がりまくる。いやあ、これぞ旅の醍醐味ですね!(違います)

「ひー、オモロイ。ああ、腹痛い。あ、去年シーカヤック行った時泊まったあのホテル。神戸クアハウス。あっこまで送ってよ。あそこならこの時間からでも泊めてくれるから」
「ラジャー!!」

 言って、友人Mが車をかっ飛ばす。そろそろ疲労困憊。彼が眠くならないよう、横で混ぜっ返すのが俺の仕事だ。

「そうそう、ホントはこーゆー時の為のビデオiPodだったんだよね! 前も経験あんだけどさ、映像だと音楽よりも“ハッ”ってくる感覚デカイのよ! マジで一瞬で目が覚めるよ!」
「バッテリー切れで動かないけどね」
「そうだね・・・」


混 ぜ っ 返 し 失 敗 。


 仕方ないので転職してえなあ、でも出来ねえなあ、みたいなダメサラリーマンの定番会話をして過ごしてみた。そして走ること2時間。車はようやく神戸に着いた。

「おおお! ここは三ノ宮! 翼よこれが神戸の灯だ!」
「車だってば」

 神戸クアハウス前で下ろして貰い、俺は荷物を取り出す。余談だがそのさい慌てたあまり車のハッチに思いっきり頭をぶつけ、その後一週間に渡ってコブがガンガン痛みまくることになるのだが、それは別の物語である。

 俺は荷物を担ぎ、友人MとM先輩を振り返った。二人はこれからさらに家まで、1時間ほどのドライブをせねばならない。しかも二人とも明日会社だ。

「お疲れ。事故らないようにな!」
「うん。まあでも、楽しかったよ。じゃあね!」


 車が走り出した。半ば虚ろな目でハンドルを握る友人Mを見ながら、ああ、と思った。

 トラベルの語源は「トラブル」だという。しかしそれは俗説であり、本当の語源はラテン語の「トラベイユ」。それは「労働」「苦痛」「苦労」を意味する言葉だ。


 ――なるほど。昔の人は巧いこと言うなあ。


 なにごとも先達はあらまほしきことなり。俺は遠ざかり行くクルマに向かい、手を合わせた。南無阿弥陀仏。成仏しろよ。

 俺はホテルへと向かいながら、今日を思った。苛酷だったが、楽しい一日であった。


 俺 だ け は 。


 奴らの一日は、まだまだ長そうであった。(ちーん☆)

(完)


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