2008年11月15日
11月15日(土) 晴れ 1/3
その夜、俺はチャットで大変盛り上がっていた。
MAD:『いや、ここはやはりぷにさん×棒さんで!』
ぷに:『いえいえ! やはりMADさん×棒さんがスタンダードですよ!』
棒:『どっちにしても俺が受けってどういうコトだぁぁぁ!!!』
・・・盛り上がっていた。
ぷに:『ひぃひぃ、ああ楽しい。ところで、もう4時過ぎですけど、睡眠時間だいじょうぶですか!?』
MAD:『大丈夫! 明日は休みですから!』
棒:『それなら良かった!』
MAD:『朝7時起きで神戸行って、朝から異人館めぐって昼から演劇見て晩プロレス見に行きますけど』
棒・ぷに: 『 早 く 寝 ろ 』
そして、翌朝。俺は滋賀から三ノ宮へと向かう列車の中にいた。京都を過ぎたあたりで椅子に座れたので、うとうとしていたら、大阪を越えたのを覚えている。そして、その車中で俺は、三ノ宮で10時に合流予定の大学のツレ、友人Mより、一つの衝撃的メールを受け取ったのである。
「件名:ゴメン
本文:二日酔いで20分ほど遅れます・・・」
二日酔い!? 大丈夫かいな奴は!? 仕事の接待で、また遅くまで飲んでたのかなあ。ご自愛下さいよ。俺はふぅとため息をついて駅の看板を見上げ、彼に返信を打った。
「件名:大丈夫!
本文:
今 寝 過 ご し て 明 石 だ か ら 。 」
三ノ宮より10数駅離れた明石より俺が帰還し、友人Mと合流できたのは、遙か後、10時45分のことであったと、後世の歴史家は伝えている。
「すまーん! マジすまーん!!」」
「あはは、いいよいいようぇっぷ」
「――っておいおい!? 二日酔い大丈夫!?」
「うん大丈夫じゃない」
「・・・は?」
「最悪。最低。ムリっつーか吐きそうっつーか吐く。うん吐く」
「ちょ!? いいよ止めようよ!? どうせ俺も2時間っきゃ寝てないし、もうそこらのマンガ喫茶で昼まで仮眠でも!」
「いいや行く! 大丈夫行く! 男に二言はないようぇっぷ!」
「ちょ、友人M-!?」
言い出しっぺの責任を感じたのかお祭り気質なのか、ムダに男気を発揮する友人Mに連れられ、俺が向かったのは神戸異人館の一角、「英国館」であった。
◆英国館
http://www.ijinkan.net/ijinkan/eikokukan.html
かつて外国人居留地として栄えた地に建てられた建物を保存し、観光施設として公開している神戸異人館。その中で、英国人が住んでいた屋敷を保存・公開しているのがこの英国館である――ってそのまんまだな。
西部劇でもおなじみのコロニアル様式で建てられたこの建物の中には、往時の設備がそのまま残され、ヴィクトリア朝時代とかが好きなものには、たまらん状況となっているのである。ちなみに夜は「King of Kings」というバーになるのだそうな。そんな名前のゲームあったな。
だが、今回の我々の目的はそんなところではない! なんと、この建物が去年100周年を迎えたのを機に、中に一つの企画部屋が設置されたというのだ! 英国を代表する、ある小説の高名な主人公の部屋を再現したというものなのだが、その部屋の主の名こそ!
シャーロック・ホームズ!!!
名探偵の代名詞! 霧の都ロンドンはベーカー街221Bに居を定め、その卓越した推理力で数々の難事件を解決していく彼の活躍は、今なお多くの読者を魅了してやまない! そして何を隠そう、俺と友人Mもまた、彼に魅せられた人間の一人なのである!!!
さあ、入るザンスよ! チケットはどこで売ってるんザンスか!? おお、あそこかー! Let's購入!! ――って、なんですか売店のおばちゃん!?
「英国館と並んでる二つの館の入場券と、セットになった券がありますよ! セット券なら、通常1800円かかるのが、1300円でとってもお得ですよ!」
いや、別に英国館だけでいいし! 見たいのホームズの部屋だけだし!! 断ろうとした俺の一拍前で、友人Mが爽やかに言った。
「じゃあ、セット券下さい」
えええー!? まわるの!? 別に他の屋敷なんて見たくないよ! そんな言葉をかみ殺した俺だが、実はこの友人Mの行動は非常にグッジョブなものであった。このことで俺は彼に感謝することになるのだが、それは後の話である。
さて。脂ぎった手にチケットを握りしめ、我々は英国館へと突入した! 入り口へ向かって歩きフオオオオオオ!!!!
さっそくに! さっそくにホームズの絵が! 思わず一定の距離を保ち、各角度から舐めるように写真を撮りまくる俺である。どこから見ても不審人物である。不審ッぷりも、ここまで来るといっそほほえましい。(そんなワケあるか)
うおお、テンション上がってきたあ! さあ見るよ!
入り口間際に飾られたジャガーの旧車を堪能し、かけられた衛兵のマントを着てみたりなどしつつ、ついに我々は目的地へ降り立った。英国館2階。そこにホームズの部屋はあった!
おおおおおお!!!! いいね! いいねえ! 思ったよりだいぶちっこい部屋だけど、雰囲気は出てますよ!
依頼人の手紙を突き刺したジャックナイフに、スリッパにしまったタバコ入れ。あの丸いのは炭酸水製造器か? おお、あれは暇つぶしに拳銃で撃ち抜いたという「V.R」――ヴィクトリア女王の頭文字ではないですか! さすがに文化財に傷つけるわけにはイカンってことで、これは加工してるだけみたいだけど! そしてライヘンバッハの滝に落ちて姿を消してより3年後、鮮烈な復活を遂げたさい、モラン大佐を罠にはめた蝋人形! 色が塗られてないのでリアリティには欠けるが、でもいいね! うっひょー! テンション上がるー!!(≧▽≦)
なかなかいい作り込みで、しかもそれを詳細に解説したガイドペーパーまであったのでなんなんだコレは、と思ったら、設置に当たって関西シャーロッキアンクラブなどのお歴々が力をお貸ししたようです。そして、壁に掛かる英国総領事とロンドン・シャーロック・ホームズ・ソサエティからのメッセージ。アカン、もうお腹いっぱいや~。
しかしコレ、興味ない人にはただの汚い部屋だよなあ。まあ、それがいいんですが! あと、ホームズが捜査のさいよくつけていた鹿内帽やコートなども置かれ、来てみることが出来たのも楽しかった。あれって、ストールみたいに、本当に「羽織る」だけのものだったのねえ。勉強になりました。まあ、小太りの俺としては、ホームズと言うより完全にワトソンだったんだがな! でも満足だ!!
さあ、満足した! 演劇を見に新神戸オリエンタル劇場へ向かおうではないか!――って、どうした、友人M? 残りの異人館?
ああ、そう言えば3枚つづりの買ったねえ。まあ、捨てるのももったいないし時間もあるし、寄ってみようか。洋館長屋。割愛。(ひでえ) あとどこだけ? ベン邸? 誰だよベンって。そんな奴友達に持った覚えはねえぞ――と言いつつ、訪れた最後の一軒。
ナ ニ コ レ 。
そこには、無数の動物たちの剥製がかざられていた。
足形だけで20cmはあろうかというバイソン。巨大なつのを持ったオリックス。翼まで入れれば、3mにも及ぼうかというハクトウワシ。、チェシャ猫のような笑みを浮かべるリンクスに、犬とはあまりに違う異形を有したホワイトウルフ、現代最強最大の肉食獣北極クマ。erc、etc。
俺は、自分のアゴがスッコーン!と地面に落ちる音を聞いた気がした。すげえ。それ以外に何の言葉もない。すげえ! なんだこれ!? 映画とかではよく見るけど、こんなの本当にあんのかよ!? ベン、お前何者!? 機械伯爵!?(古い) こりゃあ来て良かった! 見なけりゃ一生後悔するとこだった! ありがとう友人M!
解説を読むにこの屋敷の持ち主だったベン・アリソンというおっさんは、輸入商を営むかたわら狩猟家として世界を旅し、狩った獲物をこうやって剥製にしたり敷物にしたりして商っていたらしい。
それにしても、ううむ。
悪趣味という人もいるだろう。気持ち悪いという人もいるだろう。残酷な、と唾棄する人もいるだろう。
しかし、俺はただ畏敬の念に打たれていた。おそらくは、高名な剥製職人の手によって作られた剥製なのだろう。ここに飾られた動物たちは、生前の姿を見事にとどめ、本当に今にも動き出しそうに見えた。本当に、巨大で荒々しく、そして見事に
――美しい。
世の中には、こんなにも美しく、巨大な生き物がいるのか。こんなにも危険で、魅力的な世界があるのか。すげえ、すげえ、すげえ!!! 魔法なぞなくても、異世界なんかに飛び込まなくても、世界は、こんなにも脅威に満ちている!
いつか、見に行こう。きっと、手に触れよう。その世界に、いつか、きっと、俺も。
ぎゅっと拳を握りしめつつ、俺はそう誓うのだった。
北 極 ク マ と 狼 は 勘 弁 だ が 。
デカイよ! つーか恐いよお前等!? 特に狼! そんなデカイ身体のやつら20匹に襲われたら、そりゃ勝てねえYO! 遭いたくねえYO!!
脅威は見たいが命は惜しい。遠く響く「野生の王国」のテーマをBGMに、我々は次の舞台へと進むのであった。続く!
Posted by MAD at 23:27│Comments(0)
│日記。
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。