2010年03月08日
而立。前編

ひさびさに、散髪に行ってきたよ!
「どもども、オーナー」
「どもどもMADさん」
と挨拶をかまし、最近明治維新にハマっているというオーナーと
「MADさん、龍馬って今福山雅治がやってますけど、本当は唾とかべっちゃべちゃ飛ばしてしゃべる変な奴だったそうですよ!」
「へー!」
「お姉ちゃんへの手紙も残ってて、北辰一刀流の皆伝もらったときなんか『えっへん我が輩は』みたいな子どもみたいな書き方してるそうで」
みたいなことをしゃべっていると、カラン♪と音を立てて扉が開いた。そして、「こんにちはー」と言いつつ、20代半ばくらいの男性が入ってきた。
「こんにちはー。本持ってきました。前に言ってたお店、これに載ってますんで」
「おー、ありがとありがと! ここね。分かった、行ってみる!」
「ぜひ行ってみてください。オススメは○○カレーで、××はあまりオススメじゃないんで……」
と軽くトークをし、頭を下げてすぐに出て行く青年。何事もなかったかのように帰ってくるオーナー。ここで散髪をしていただいていて、よく見る風景である。
オーナーは友だちが多いうえ、興味の幅が半端ない。散髪しながらトークをし、面白そうなことがあればどんどん聞いていって出かけていって、ガンガン世界を広げていくタイプな方なもので、来る度にこーやって、いろんなひとが出入りしているのを見る。ここで一日座ってたら、俺の総友だち人口の、3倍くらいのひとを観測できる勢いである。すげえ。
「彼ねえ、僕のカレー友だちなんですけど。すっごい面白い奴でねえ」
「うむ。そこで早速突っ込みたいとこ満載ですが、続きがあるみたいなんでどうぞ」
「はは。彼、学校出てから今まで、就職したこと無いんですよ」
「? ニートってことですか?」
「いえいえ! それがですね、面白いんですよ。フィギュアって知ってます? アニメとかの、人形の」
「え!? もちろん、知ってますけど!?」
「それのね、まだ組み立て前のを買ってくるんですって。で、注文を受けて組み立てて、服とかも注文通りに、専用のをあつらえて着せたのを送るらしいですよ」
「えええええー!? うわ、そんな人だったんですか!? そりゃ確かにすごい!」
「でしょー。僕にはすごさが今ひとつ分からなかったんで、同じ野球チームに、魔法モノのアニメが大好きな男がいるんで、そいつと引き合わせて聞いてみたら、そりゃもう貴重なのがモノすっごい量、あったらしく」
「ほう!」
「二人意気投合して、一緒にメイド喫茶に行く仲になりました」
「ぶわはははは!!! いいなあ! それいいなあ!! 俺も行きてえー!」
と、そんな話をしている内に、「マニアックな人が好き」と言う話題に。
「最近、マニアックな趣味を持っている人が、面白くてたまらないんですよ!」
「ほう!」
「うちの友だちにも、第二次大戦マニアで、影でなんて言う銃か分かるって男や、いけないDVDマニアの男とかがいてですね、こいつらがもうオモロイオモロイ! いけないDVDマニアの奴なんて、それまではほとんどしゃべらん無口な奴だったんですが、DVDの話になった途端、もうベラベラベラってしゃべりはじめて!」
「ほう!」
「『今まで見てきた中で、一番面白かったDVDはですねオーナーさん、まず、始まってすぐ、カレーを食べに行くやつです』」
「カレー!?」
「そう! なんかね、HなDVDのくせに、いきなりカレーを食べに行くそうです。そんでそこにナレーションが入って、『日本で一番旨いカレーだ』とか言うんですって」
「なんてシュールなエロDVDだ……」
「で、そのマニアな奴が振るってましてね! 『僕、そのカレー食べに行ったんですけど』」
「行ったの!?」
「行ったらしいです。(笑) 『これがね、オーナー! 普 通 な ん で す 。 マズくはないんですけど、そんなにめちゃめちゃ旨いってわけじゃなく、普通なんですよ! DVDで“日本で一番旨い”って言ってたカレーが普通で、僕にはそれがショックでたまらなかったですよ』とかまじめな顔で言いやがって、僕もう大爆笑でしたよ!」
「~! ~~!!」←悶絶してる
そしてオーナーの言うことにゃ。
「そういうね、面白いことを腹ん中に隠してるのを、引っ張り出して聞きたくて仕方ないんですけど、やっぱりねえ、みんな中々さらけ出してくれないんですよねえ。いや、僕の知識が浅いせいだと思うんですが。さっきのフィギュアの彼も、『オーナーに言っても分からないと思いますんで』と、濃い部分はさらっと避けて説明してくれるんですよね。そこが聞きたいのにー!」
「ううん、でもそれは、気遣いだと思いますよ?」
「気遣い、ですか?」
「ええ」
小首をかしげるオーナーに、俺は、言った。
(続く)
Posted by MAD at 22:58│Comments(0)
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