ハイランダー。1合目。
『明日ヒマなのよ。どっか連れてっておくれよMADくん』
M先輩からそんなメールが届いたのは、昨日のことであった。
おのれー! あと一日早く連絡を寄越せば、シャワクラなり他のアウトドアなり予約ができたものをー! 超ウルトラ仕事忙しいこの時期にメールなんざもらって対応してられるかボケー!!
しかし、先輩の命令は絶対である。
しかも、たまたま偶然超珍しいことに、明日の休みは予定がなかったのだ! このラッキーボーイめ! いやもう、おたがい「ボーイ」なんて年じゃねえけど! ラッキーアダルト? ラッキーアダルト・チルドレン? まあいいや。俺が休みにヒマな確率なんて、2割くらいしかないんだぞ!? もちろん用事ある確率が2割な!
ただ、明日は3連休のド真ん中。どこ行っても混んでいる。さらに、先ほど言ったように、今日の俺様は超多忙。予約入れるイベントも無理だ。八方手詰まりか?
――フフン。
俺は嗤った。この程度で手詰まり? このMAD様を舐めてもらっては困る。3連休で混むなら、人がいないところへ行けばいいだけのこと。山。滝。心当たりならある。ネタなら常に持っている!
俺は完爾と笑い、M先輩へと返事を打った。滋賀での決行になりますが、よろしいですか? ややあって、返事が届く。
『問題ない』
OK。なら決まりだ。俺は唇の端を歪め、しゃがれた笑声をあげた。よござんす。おつれしやしょう。あなたを、極上の異界にね。
『何時に拾いに行けばいい?』
『何時でも。早くおいでなら、それだけ遊びに行ける場所が増えるだけの話で』
『なら、こっちを6時に出よう。8時には拾える。して、どこに連れて行ってくれるんだ?」
『真っ白い坂に、極上の滝。それに、朝飯にゃあホットドッグなんていかがです?』
『OK。――楽しみにしてるよ』
こちらこそ。
クークックック、アーッハッハッハ!! メールを終えて、俺はこらえきれず笑い出した。
目の前の大量の仕事に、もう笑うしかなかったのである。
その日、俺が帰宅したのはやっぱり、22時過ぎであったという。
(続く)
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