筋 肉 痛 が 。
ハイランダー。2合目。
とゆーわけで。M先輩と遊びに行ってきたワケなのである。うむ、どんなワケだ。
ま、端的に言うと先日買った『滋賀本』というムックが非常に当たりで、行きたいとこ山積みウッキウッキモンキー!だったので出かけたのである。
今回はM先輩が迎えに来てくれると言うことで、珍しくたっぷり寝て出かけることができた。いつも朝イチの始発で神戸行って、そっから合流だったもんなあ。そりゃ寝れんわ。今回はたっぷり寝ましたよ! 3時間も!! 当社比2倍です。
「ちわー」
「ちわわー。スマンすね、遠くまで」
「だいじょぶまかせてOKよー! して、何処に!?」
「ふっふっふ、今回の目的地は滋賀県高島市。白い坂と滝見物&生水の郷めぐりです! とりあえず、腹ごしらえしましょ腹ごしらえ。行く道の途中で、移動ホットドッグややってるおっちゃんがいるらしいんですよ! Let’s Go!!」
「ラジャー!!」
かくして我々は旅だった!! 一昨日買ったばかりというNew iPodから怪しげなソングと動画を垂れ流しつつ、車は颯爽と湖岸を駆け行く。
「いやあ、いい天気ですな!」
「まったくまったく!」
「で、そのホットドッグ屋はどの辺にいんの?」
「白鬚神社のそばらしいんですけどね。ま、時間もたっぷりあるし、じっくりさがしましょうよ! あ、ちょうどいいんで白鬚神社も寄りましょ! 我輩まだ寄ったことないんで!」
「オーッケェェェェ!!!!!」
言って、M先輩はアクセルを踏み込んだ。きしんだ音を立てて、車が加速する。琵琶湖大橋を渡り、湖西道路を駆け抜け、俺たちは早くも高島市へとたどり着いていた。
白鬚神社。(しらひげ・じんしゃ)
滋賀県高島市鵜川に鎮座する神社。近江国最古の神社とされる。全国に位置する白鬚神社の本社。祭神は猿田彦大神。
沖島を背景として琵琶湖畔に浮かぶ鳥居が印象的で、「近江の厳島」とも称される。
猿田彦大神を人格化する際に白髪の老人とする端緒は、当社の社名にあるといい、謡曲『白鬚』の舞台でもある。やはり社名から、長寿の神様として知られる。
社伝によると垂仁天皇の25年、倭姫命により社殿を創建したのに始まる。白鳳2年(674年)、天武天皇の勅旨により比良明神の号を賜った。『日本三代実録』の貞観7年(865年)正月18日条に比良神が従四位下の神階を受けたとの記述がある国史見在社であるが、延喜式神名帳には記載されていない。
本殿・若宮社・伊勢両宮及び八幡三社は、豊臣秀吉の遺命を受け、豊臣秀頼が片桐且元を奉行に命じ、播磨の大工の手によって造営されたものである。
(Wikipediaの同項より転載)
「古色蒼然たる神社ですなあ」
「おお! 湖に鳥居が! あの島、竹生島!? 竹生島!?」
「はっはっは、きっとそうですよ。根拠はありませんが」
後で調べたら沖島だった。不覚。滋賀県民として、あるまじきミスである。
「水キレイだねえ」
「ですねえ。――っておお! チビッコが泳いでる! 波強い上、水深いぞキミたち!」
その後古社をめぐり、蛇にビックリしたり、ご神木の下に飾られたとても小さなお地蔵さんに心暖まったりしながら、我々は再び車上の人となった。
「いいとこでしたなー」
「神社っていいですよねえ」
心が満たされたら、次はお腹である。さあ、捜すぜホットドッグ屋! 俺たちのお腹はとっくに臨戦態勢さ! ばっちこーい!!
『滋賀本』掲載の大ざっぱな地図と首っ引きで捜すこと10分。ついに我々の目は目指すホットドッグ屋、「風月堂」の黄色い車体を発見した! 陽光の下、琵琶湖をバックに燦然と輝くその車体! 沸き上がる歓声! あふれでる涎! その瞬間、我々は見た! 店主とおぼしきおっちゃんが、椅子や机、材料を運びまくっているその姿を!
準 備 中 。
我々はものすごい勢いで向かいのうかわファームマートに突入し、時間を潰した!!
(てれてれてってってーん♪)←ドラクエの宿の音楽
よし準備完了! おいちゃんが営業を始めたのを確認すると、我々は猛然とお買い物へ行った! 関係ないけどうかわファームマート、置いてる野菜安いし上手そうだしだいぶ気に入ったが、今日はさすがに買ってるヒマねえ! また今度な!
道路を渡り、バンへと近づく。前のお客とおっちゃんが繰り広げる場末の居酒屋みたいなトークに耳傾けつつ、我々はおっちゃんへ声を掛ける。
「ソーセージのホットドッグいっちょー!」
「俺ハンバーグのホットドッグいっちょー!!」
「あいよー」
焼き上がったホットドッグは、カレー風味のキャベツをぎっしりはさみ、そこへ魚肉ソーセージか、自家製ハンバーグを挟んだもの。マスタードが強めに利いてて、うむ! うまい!!
「ジュースちょうだいー。コーラ」
「あ、我輩も」
「そこのクーラーボックスに入ってるから自分で取って。100円ね」
い い な あ 、 こ の 緩 さ 。
すぐ向こうの琵琶湖に目をやりながら、熱々のホットドッグをかじり、冷えたコーラで流し込む。おおー、なんかアメリカ映画みてえ! 気分はローリング70's。西海岸ですよ!
原色で塗り立てられ、フィンテールをピンとかかげた大食らいのデカい車。Coolを合言葉に、サングラスで必死の虚勢を隠す若者達。そして、世界に向かって抱いていた、根拠のない夢と希望。
俺は口の端に着いたソースをペロリとなめると、ホットドッグの袋をクシャリと握りつぶした。
「さあ、行きましょうか!」
「おうよ!」
答えたM先輩と、車へと駆けよる。イグニッションが回り、車が咆哮をあげる。締め切った車の中には、真夏の風が溢れていた。M先輩がiPodに手を伸ばす。流れる曲はなんだ? サーフィン・U.S.A.? 二人だけのデート? 夢のカリフォルニア?
♪(ふにふに恋☆) やっときました
♪(うみうみ海!) あっちちちな恋
エ ロ ゲ ソ ン グ か よ 。
まあ、これはこれで! どうせ俺たちの夏はアメリカより有明。西海岸より東館よー! もう10年近く行ってないけど!!
「さあ行くぜー!」
「おおおおーっし! Here We Go!!!」
昨日までの曇り空は、嘘のように晴れ渡っていた。連休中の朝一番とあって、道路もほとんど混んでない。夏はまだ終わっていない。いや、俺たちの夏はこれからなのかもしれない。
俺は空を見上げ、まばゆく輝く太陽を見つめて、目を細めた。
――暑い一日になりそうだぜ。
そんな俺を尻目に、iPodから流れる曲は、いっそうダメ度を増していた。
(続く)