「次は『太郎坊神社』を目指そうと思うのよ」
と、俺はハンバーガーを食いながらいった。ところは彦根「SUN-BURGER」。近江牛を使ったバーガーで人気を集めるお店である。俺の写真を見ると食欲をそそらないかも知れないが、これは撮った俺の腕が悪いのであって、現物はモチ、めちゃめちゃ旨いのである!
ここの特徴として、「サルサ、タルタル、チリの3種類のソースを準備。無料」というのがある。そして、バーガー自体は、すっごくシンプルな味なのだ。おそらく「ベースとなるハンバーガーは、最高のものを用意しました。あとの“一匙”――“好み”にあたる微妙な部分は、自分の好きに仕上げてください」という試みなのであろう。
今回は初めてだったのでベーコン・バーガーになにもつけずに食ったが、あふれ出る肉汁といい、しゃっきりしたレタスといい、いやあ、大満足でしたよ! 次はなんか、ソースにもチャレンジしたいぜ! でも彦根は遠いぜ!
■SUN-BURGER (サンバーガー)
http://r.tabelog.com/shiga/A2503/A250303/25000868/
http://blogs.dion.ne.jp/nakoi_h9/archives/6360795.html
「よく分からんけど、いいよ」
「OK! ひあ・うぃ・ごー!」
そう言って俺はアクセルを踏み込んだ! 着いた! そろそろ内容忘れてきたから、展開が早いぜ我ながら!
太郎坊神社! それは滋賀県東近江市小脇町にある神社であり、正式な社名を
阿賀神社という! 元来多くの修験者が参篭した山岳信仰の霊地であり、その修験者の守護神とされた「太郎坊天狗」が神社の社殿を築いたという伝説から「太郎坊神社」と俗称されるようになったという。主祭神は正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊。勝運授福の神様である。
「太郎坊、鞍馬の次郎坊のお兄さんで、普段は京都に住んでるらしいよ?」
「京都で太郎坊って言うと、やっぱり愛宕山の太郎坊かな。日本八大天狗筆頭ですよ! つか、確か“日本最強の武芸者”が太郎坊だって伝説があるっていう話、なにかで読んだ記憶があるんだけど、誰の著作だったかなあ。小松和彦先生だったかな」
「武芸者? 鞍馬の天狗が源義経に武芸教えたって話があったけど、そっちじゃないの?」
「違うんだって! 日本の天狗の親玉は崇徳天皇だけど、愛宕山の太郎坊は強い神通力を持った大天狗で、日本一の武芸者って伝えられてんのよ! そのうちなんかの設定に使ってやろうと思ってたから、めっちゃ覚えてんの!」
「忘れてんじゃん」
「忘れてるねえ」
そんな話をしているうちに車は山の中腹にある駐車場へと着いた。俺たちはそこに車を止めると、奥へ向けて歩き出した。そして。
「階段急過ぎぃぃぃーッ!?」
絶叫した。
さすがもともと、修験道の聖地! 階段の急さ半端ねえ!
ちなみにこの神社、御山自体が信仰対象だったこともあって、山裾にも駐車場があったのだが、そこからは歩いて2km以上ある。しかも、このお山、けっこう高いのだ。
下の駐車場に車止めて登ってくるなどという無茶をしなくて、本当に良かったと思う今日この頃である。友人M、ナイス判断!
「ひぃ、キツい!」
「これはマジで来るねえ!」
金比羅山や立木神社など、名にし負う階段保持神社を制してきた! でも、なんかここ、今までで一番キツい気がする!
ぜえぜえ、ひいひいと息を切らしながら登る俺。その視界が、不意に開けた。
「うお!? 絶景だな!?」
そして、蒲生野を一望する展望台から、再び参道へと目を転じた俺は、そこにもう一つの絶景を認めて、もう一度声を上げた。
「うひょおおおお!!!!!!」
出たー! 夫婦岩だー!
太郎坊神社の象徴「夫婦岩」! それはわずかな隙間を残してそそり立つ巨石である! 伝説に寄れば、この岩はご祭神様が二つに断ち割ったせいでこうなったのだそうな。柳生の郷に行ったさい、柳生石舟斎が断ち割ったという
「一刀石」なる巨岩を見たが、さすが神様。スケールが違うぜ。
本社へと続く参道は、この岩の間をくぐって続いている。うひょお、通るぜ! 通りまくるぜ! 俺は岩フェチなんだ! 5年ほど前に知って以来、来たくて仕方なかったこの魅惑の参道へ向かい、俺は足を踏み入れたのであった。そいやっ!
そして、その参道の向こうには、主祭神「正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊」(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)をお祀りする本殿がそびえていた!
それにしても。
「どうしたMADくん?」
「ここ、めちゃめちゃいい神社だねえ!」
古色蒼然とはしているが、寂れた雰囲気はない。大きな神社であるのに、掃除が行き届いている。それを俺に強く感じさせたのは、この本殿を装飾する布だった。頻繁に持ち運びも出来ぬ山上のお社なのに、大変きれいで、しかも安っぽくないのである。
ある程度、観光客も来るのだろう。取材記事もよく見かける。でも、こんな田舎、それだけでこんな風な維持は出来ない。たぶん、氏子さんたちがまだしっかりお守りしてて、尊崇を受けているんだろうなあ。
そろそろ和らぎを見せ始めた日差しがあたり、布がきらきらと輝いていた。夫婦岩の間をすり抜けた風が緑を揺らし、俺たちのほてった身体をなでていった。
なんだかうれしくなって、俺は急な階段をとててっと、軽やかに駆け下りた。
「いやあ、いい神社だったね友人M!」
「まったくだ!」
車に乗りながら、俺たちは言い合った。
「ほんと、気持ちのいい神社だったよ! これで、お土産に『天狗まんじゅう』とかあったら良かったのにな! 商売っ気ない神社だな」
「うむ。そいで天狗を女性化してだな、萌えキャラとして売り出しを!」
「えーと、友人M?」
「なに?」
「まだ、ご神域」
「……。あ」
「ご神域で、ご祭神様をバカにするとは、最悪だな君!」
「ち、違うんです太郎坊様! 僕はこの神社の一層の発展を願って!?」
「そんな発展願い下げじゃああああ!!!」
つ か 、 そ れ 、 太 秦 に も う い る し な 。
http://www.ujyu.jp/
あれ? そういや、「うじゅ」って、鞍馬の天狗の一族だっけ。そして、太郎坊様は、鞍馬山に弟がいる、と。
あれ? 繋げられないことも――。
気 づ か な か っ た こ と に し て お こ う 。
この平和で愛された神社のためにも。
いやしかし、本殿にいた巫女の女の子がうじゅのコスプレとかしてくれるなら、そんなに悪くないかもしれんな。
そんなことを考えつつ、我々は次の目的地、京都へと向かうのであった。続く!