幸せ特急便。サプライズ・佐賀!!!その1

MAD

2009年04月21日 09:19



 その日、俺はたいそう悩んでいらっしゃった。

 先日コンビニ仲間にして、マイミクのPさんより強奪、もとい、快くいただいたバレンタイン。そのお返しを、なににするか。つらつらネタを考えていた先日、ふと、あるものを見つけたのであるが、それがなかなか難題だったのである。

 その、見つけた「あるもの」というのは、某人気店のバウムクーヘンであった。

 「あー、そういえばここのバウムクーヘン大好きだ」って言ってたし、ちょうどいいかもなあ。あ、でもこれ、配送不可って書いてある! 「壊れやすいから、お持ち帰りのみ」って!


 ううん。


 しばし沈思黙考する俺様は、あることを思いついて、ふと顔を上げた。あれ? 俺、今度の日月連休じゃなかったっけ? おお、そうだ! よし! 直接持って行こう!



 バ ウ ム ク ー ヘ ン 丸 一 本 を 。







 そして、18日日曜日。

 我々は佐賀でイカを食っていた。







 ここは、佐賀は呼子にある、海中レストラン「海中魚処 萬坊」。日本初の海中レストランであり、呼子名物イカ料理で知られる人気店である。うめー! イカの活き作りマジうめー!!!! 新鮮な上、食べやすいようにキレイに包丁が入ってて! 大阪の田尻漁港で漁業体験したとき以来の旨さですわ!
http://www.manbou.co.jp/restaurant.html


「ええと、それはいいんだけど」
「ん? どうした大学時代の友人M?」
「説明的なセリフをありがとう。いや、なんで僕までここにいんの!?」
「いやだから、コンビニ友達のPさんにお返しを」
「いや、それは分かったけど! ほな君が一人で持ってったらいいやん!」
「はっはっは、お前バカだろ」
「なんですとー!?」
「お会いしたことのない女性の家に、突然オジャマするなど、紳士にあるまじき所行! 俺は基本的に、ネットでも現実でも、女性相手は先方からお申し出のない限り『友達申請』も『遊びのお誘い』もせんことにしているのだ! だいたい、見知らぬ男がいきなり訪ねてきたら、キモいっつーか、恐いだろ!? ぶっちゃけ引くだろう!?」
「こんなバカでかいバウムクーヘンが届いた時点で普通引くわー!?」
「はっはっは、そんなわけなかばってん。満点大笑いでばってん。だから、代わりに君がコレ持って行くのだ」
「――は?」
「君が配達員を装って荷物を持っていけ、とゆーのだ! これで『お会いしたことのない方の家に突然お邪魔』という無礼は回避できる! そしてこの『配達不可』の荷物もお届けできて、モーマンタイですよ!」
「 お 前 バ カ だ ろ 」
「なんですとー!?」


 なんと無礼な!? この天才とも言うべき発想にケチを付けるとは! やはり奴のごとき小物では、我が輩の深謀遠慮は理解できぬのか! ああ、燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや!


「ああ、そこの燕雀」
「鴻鵠の方じゃー!?」
「どっちでもいいけど、相手さんのご住所、ナビにないぞ?」
「なんですとー!?」


  名物イカ懐石を食い終わり、さあ出発だとPさんの住所検索をかました途端、『そんな住所ねーわハゲ』とナビがほざいたとゆーのである! ピンチ! 早くもピンチである! まあ、実はここに来る前、京都駅でMとうまく合流できず、新幹線に乗れたのが発車2分前だったとか、そもそもバウムクーヘン取りに行ったら、オープン2時間前なのにケーキバイキングに並んだ50人超のお客さんに阻まれてヤバかったとかすでに色々あったりしたのだが、ともかくピンチである!


 ひょっとして、送ってきたときの住所はダミーだったのでは!? なんだよシャイだなあ。そんなこと隠すなんて!

「いや、君に住所知られたくなかっただけだろ。俺だってこんなもん送ってくるような、テロリストみたいな奴に住所知られたくねえ」


 ハッハッハ、友人Mナイスジョーク! 仕方ない。メッセで聞こうポチッとな。


『ヘローヘロー。配達員が住所分からないって言ってんだけど?』
『ああ!? 市町村合併の都合で分かりにくい住所になってるんです!>< ちゃんと実在の住所ですから!』

 そなの? 思って近くの住所で入れ直してみると、おお! 出た出た! たぶんここだ! 単に三菱ナビの性能が悪いだけかよ! さー、場所も分かってあっさり着いた。では友人M、配達に行ってくるのだ!

「へいへい」
「じゃあ、荷物コレね。君の役割はK急配達サービスの配達員。まずピンポン押して、応答あったら『こんにちは! K急配達サービスです! Pさんにお届け物です!』って元気よく言ってな!」
「え? ええ。あ、はい」
「ダミーの配送伝票付けておいたから、相手が受け取ったら、この2枚引っこ抜いて! で、下のココにハンコもらってな。(バサッ)」
「あ、うん。分かった。――って、バサッてナニそれ?」
「ん? 見て分からんか? 配達員のウインドブレーカーに決まっておろう! そんな普通の格好の配達員がいるか! 超怪しいわ! つーこって、会社から借りてきた。これ着ていけばバレないだろ。本当は帽子もあるといいんだけど、さすがにそれは借りだせんでなあ」
「なんでお前、そんな準備周到なんだ!? うう、なんか次官襲撃テロの犯人みたいだ。ええい! こうなりゃヤケだ! やってやらあ!!」
「きゃー、友人Mステキー☆」


 そう言って走っていった友人Mは、なんだかヤケクソに見えましたが、きっと気のせいでしょう。……って、なかなか帰ってこないな? 留守だったのかな? おかしいなー。Pさん「夕方なら、家に誰か絶対いる」って言ってたんだけど。お、帰ってきた。

「うおおおー!!!(ガチャ) ああ、緊張した!」
「なんだその、犯行現場から逃げるテロリストみたいな走りは」
「ううう、ぶっちゃけ気分変わらん! ピンポン三回もならしたのに、おうちの人出てこないんや! 危なかったー!」
「おお、それでどうした!?」
「したら、『あれ? 宅急便?』て、ご親戚の方か知らんが、声かけてくれて! 『誰かいると思うんやけどねー。私、嫁に行って久々に帰ってきたから、ハンコの場所が分からないのよ』って言わはるから、サインでいいです!ゆーて、でも俺ボールペン持ってないから、怪しまれないかと焦って! お願いしてササッと書いてもらって、やっと帰ってきたわ!」
「うーっひゃっひゃっひゃっひゃ! そいつぁおもしれえ! いやあ、お疲れさーん!」
「誰のせいだと思っとんじゃああああああああああ!」


 ミッション・コンプリート! さあ、用事が済めば長居は無用だ! バレないうちにトンズラこくぜ! あーばよ、とっつぁ~ん!(バルルルルルッ!!!!!!)

 でも、まだだ! まだ終わらんよ! 仕掛けはこれだけではないのだ!

 しばらくして、Pさんからメッセが届いた。ぽてくりこーん♪←効果音


「件名:届きましたwwwwwww
内容:なんじゃこのデカさの箱はーー!!wwwwwwwww

(中略)

色々ありがとうございます!!
まだ残業だとおもうけど頑張ってください><」


 俺はニヤリと笑い、返事を打った。


「件名:いえいえ
 内容:今旅行中ですよ?」

 そしてすかさず、呼子の写真をUPだぜイエー! ずんばらりーん!(効果音)

「件名:Re: いえいえ
え・・・!?
え!???

りょこ・・・イカ・・・!??!??!?!?? なんで呼子に・・・!??!?? じゃあ、ひょっとしてさっきの配達員は・・・!??!??」


 勝 っ た 。


 俺は、この反応を見るためにここまで来たのだ!

 佐賀へと向かう車の中。混乱しまくるPさんのメールを見つつ、俺は滂沱と溢れる熱い涙を禁じ得なかった。

(続く!)

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