風呂と鰻と酔っぱらい。(中編)

MAD

2008年03月28日 01:52



 小牧で高速を降りたのが深夜2時頃。そのまま車は国道41号線を北上していった。

 さすがにこの時間となると通行量も少ない。気持ちよく車を走らせていると、景色はどんどん山道へと変わっていった。

 くねくねと折れ曲がる道を、軽快にコペンが走る。前にトラックが見えた。対向車がほとんど無い真っ暗な道を、ある時は中央線をショートカットし、またあるときは道幅一杯を使って、高速で駆け抜けていくトラック。それを追う俺。BGMはユーロビート。コペンはトラックの後ろをピタリとつけ、追い抜く瞬間を虎視眈々と狙う。そして! 一瞬の隙をつき、ついにコペンはトラックの前に!――って 


 こ れ な ん て 頭 文 字 D ?


「つか、なんでCDユーロビート1枚しか積んでないのよ!?」
「はっはっは、この車にCD2枚も積む余裕はありません」
「どこまでタイトなんだこのクルマー!?」

 仕方ないので自分のiPodつないで、クールダウンをはかる。そーいや頭文字Dの最新刊買い忘れてたな。今度買いに行こう。そんなことを思いつつ、俺は再生ボタンに手を伸ばした。再生再生ポチッとな♪


ぶっちぎりにしてあげる♪


「うおおおおおお!!!!」
「ちょ!? MADさん!?」
「見せてやるぜ俺のドリフトを! ロードローラーだッ!! wRyyyyyyyNNNN!!!!!」
「オートマだからドリフトできませーん!! ひぃぃ!? おたすけー!?」

 などという会話を挟んだりしたりしなかったりしながら、車はなんとか下呂へ着いた。ごめん、はさまなかった。

【鏡音リン】ぶっちぎりにしてあげる♪【ロードローラー最速伝説】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1924663



「ここが下呂か!」

 「下呂へようこそ!」と書かれた看板を前に、俺は叫んだ。日本三名泉と呼ばれるメジャーな温泉地の割には、とても小さな街だった。

「あの、本当にここですか?」
「うむ。間違いないね! るるぶ忘れたから確認出来ないけどね!」
「でも、めちゃめちゃ小さいですよ!?」
「鄙びた温泉宿とゆーやつだな。さすが昔からの温泉街。風情がある」
「そうなんですか? ええと、じゃあ川原見てみるか・・・。あれ? やっぱりお風呂なんてありそうに見えませんよ?」
「はっはっは、そんなはずあるまい」
「でも、1時間捜して見つからないって!?」
「わが辞書に間違いなどない。なんか簡単な見落としがあるのサ☆ ケータイで地図でも見てみたまい」
「・・・下呂、遥かに先です」
「あれ?」


 下 呂 は と て も 大 き な 温 泉 地 で し た 。


「さすが日本三名泉! あんな小さな集落のわけないよNe☆ バッカだなあ!」
「アナタがあそこだって言ったんですよー!!」

 市営駐車場を探すのにまた30分ほどをかけ、ようやく発見。明るくなり始めた道をお風呂セットを持って、我々は噴泉池を目指し、てくてくと歩きはじめた。

「早く! 早く行こうぜ! もうだいぶ明るいよ!」
「いいじゃないですかー。明るくなったらなったで、見せつけてやればいいんですよ!」
「なんでお前はそう見せつけたがるんだ!?」

 いで湯大橋を渡り、対岸へと向かう。橋の上から下を見て、俺はうひょうと声を上げた。おおお!!!


※写真は立ち寄り温泉みしゅらん様より

「確かに川原に温泉が湧いてるよ! 公園みたいなとこにぽこっと湧いてるよ! テラシュール!」
「うはは! さあ行きましょうLet’s Go!」

 早朝6時。我々はついに下呂温泉の象徴、噴泉池へとたどり着いた。河川敷に整備された公園の一角に、石造りの湯舟がある。もうすでに5人ほど男性が湯に浸かっている。

 小高くなった一角で服を脱ぎ、掛け湯をして、俺たちは風呂へ飛び込んだ。

「うひょー! 沁みる~!!!」

 じゅわん、と音を立てるように、お湯が身体に染みこんでくる。ホロ全開のオープンカーで冷気にさらされ、冷え切った身体に湯が浸透し、細胞の一つ一つが賦活されるようなこの感覚! たまりませんなあ、うひょひょひょひょ♪

 噴泉池には、幾本かのホースでお湯が注がれている。これは天然掛け流しとのことで、とろりとしたぬめりのある、大変気持ちのいいお湯であった。あとで別の風呂も入ったが、もう別物。お肌ツルツル。気持ちいい~。

「ちょっとぬるめだね」
「時期的に、そうなんでしょうね。これ、夜にはいると星空見れて気持ちいいだろうなあ」
「H、それいい! それいいよ! 見たかったなあ!」


 ま あ 、 俺 が 場 所 間 違 わ な き ゃ 見 れ た ん だ け ど な 。

 そんなことは爽やかに無視する俺様である。なんて男らしい。(ポッ)

「気持ちええやろ~」
「ハイ!」


 後から入ってきた地元のおじいさんとコミュニケーションなど深めつつ、30分ほど過ごして我々は風呂を出た。

「こっからどうします? 僕は街ぶらっとしてみますけど」
「俺、ちょっと仮眠・・・」

 さすがに昨日から睡眠なしで運転してきたので、そろそろ体力が限界だ。いったんHと別れ、俺は車で仮眠を取った。

(続く)

関連記事