鎌倉ストラッド。その1
リアル脱出ゲームの翌日、志野が「ちょっと行きたいカフェがある」とゆーので、我々は鎌倉探索の旅に出た。
思えば、リアル探索ゲームの言い出しっぺも志野であった。そして、翌日の予定まで奴の意見を取り入れてあげるとは、我ながら、なんといい奴なのであろうか! 決して自分の方に予定もネタもなかったからでは、ちょっとしか無い! 深読みしないように!!
横浜からJR東海道本線を乗り継ぎ、戸塚で乗換え、鎌倉駅へ。そこから江ノ電に乗り込み、たった2両の車両に揺られること一駅で、我々は和田塚駅に着いた。目指すカフェは、そこから歩いて数分の所にあった。そのカフェの名は、「SONGBOOKCafé」といった。
SONGBOOKCafé!
それは絵本作家の中川ひろたかさんが営んでおられるという、とってもキュートなカフェである。白を基調にした明るい店内で、まず目に付くのは壁に飾られた絵本作家さんたちによる直筆のイラストと、ぐるりと部屋を取り囲む本棚。
むろん、「カフェ」を名乗る以上、飲み物と甘い物も取りそろえられている。それは、素材にこだわった、体と心に優しい品々である。
それらを楽しみつつ、この本棚に並べられた、中川さんがお選びになったのだろう、児童書の良作を、中央に置かれた大きなテーブルに広げ、ヤコブセンのアントチェアに腰掛けながら、親子でじっくりと選べるという趣向なのである。
http://www.songbookcafe.com/cafe/index.php
子供もいない、おっさん二人連れ。このステキなカフェに、これ以上ないくらい似合わないとゆーか、なんか誤解されて通報されそーなコンビである。それがなんでここに来たかとゆーと実は志野は寺の関係で保育園の園長をやっていて、ここのお店の方とおつきあいが――ってフオオオオオ!?
「どうしたMAD!?」
「あ、あの『横浜国大附属小学校司書スズキ先生の「子どもの時に読んでおきたい」童話50選』とそのコーナーを見ろ!?」
「あ?」
「なんと素晴らしいラインナップか! 角野栄子さんの『ズボン船長さんの話』だと!? 鈴木浩彦さんの『グランパ・シリーズ』と並び、俺を“ホラ吹きジジイ”萌えにさせた超名作ではないか! 『グランパ・シリーズ』と言えば宇宙将棋だったか囲碁だったかをする話とか大好きだったなあ!――ってふんぎゃらはあ!?」
「なんだよ!?」
「岡田淳さんの『二分間の冒険』! 我が人生4大名作の一つではないか! それにミヒャエル・エンデの『モモ』C・S・ルイス『ライオンと魔女』アン・フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』だと!? く、まさに鉄板のジェット・ストリーム・アタック! 俺としては『モモ』よりも『はてしない物語』を推したい気がするが!――て、のっちょりぷそーん!?」
「それ驚きの擬音?」
「『大どろぼうホッツェンプロッツ』だと!? く、まさかここでその名に出会おうとは! スズキ先生とやら、グッジョブだ! ホッツェンプロッツに出てくるウィンナーのおいしそうさは無敵!」
「はあ」
「くう、なんというシンパシーを感じる50選! 俺的にはルパンは南洋一郎訳、あとトールキンの『ホビットの冒険』や舟崎克彦さんの『ぽっぺん先生』シリーズも入れたいとこだな! 『ズッコケ三人組』シリーズは、どうせ本好きのガキはみんな読むからいいだろ。でも、『あやうしズッコケ探険隊』は入れておきたいな!」
「へえ」
「佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』は100年の歳月も超えるであろう金字塔さ! あと俺50選を作るなら、マージェリー・シャープ『ミス・ビアンカシリーズ』とわたりむつこさんの『はなはなみんみ物語』シリーズ、E・W・ヒルディック『こちらマガーグ探偵団』、それになにより芝田勝茂さんの『ドーム郡物語』は外せないな! あ、できたら旧版和田慎二さんの挿絵版でお願いします! 再版のももちろんすごくいいんだけど、小学校以来で思い入れが半端ないんです!」
「ふーん」
「なんだてめえその態度は! 歯ァ食いしばれェい!」
「うぺらきゃあ!?」
みたいなやりとりがあったり無かったりしたあと、我々はお店を出た。ああ、テンション上がった! 超楽しかった! 続く!
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