ぷらっとー♪ ぷらっとー♪ ぷらっとこだまー♪ 泣きべそなんてさよならね♪ ぷらっとこだーまー♪
とゆーわけで。
我々は目的地、四万温泉積善館に着いた! 『千と千尋の神隠し』に出てくる湯屋のモデルになったと言われる、古宿である。なに? 行程? iPodの「今日も一日アニソン三昧ファイナル」聞きながら馬鹿話してたらいつの間にか着いてた。完。
「趣がありますなー」
「そうですなー」
四万温泉積善館。
ここには、山の斜面に沿って、順次増築された3つの建物がある。まずは、「本館」。元禄四年の誕生以来、現存する日本最古の湯宿建築として今なお旅人を迎え続けており、3つの建物の中では最下部に位置する。現在は湯治客用の、格安コース専用の部屋として提供されている。
逆に、3つの建物の最上部に位置するのが「佳松亭(かしょうてい)」だ。こちらは昔から名高い、美しい松林の中に、昭和六十一年建築されたという新しい建物で、設備も非情に充実している。その分お値段も最上級で、2万円台半ばからの宿泊費と、それに見合った食事とサービスを提供している。
そして、この「本館」と「佳松亭」の間をつないでいるのが、昭和十一年に建築された「山荘」である。当時の和風の粋と技巧を凝らしたという桃山様式の建物は、かつて日本各地にあったのであろう、文人墨客達がその身を休めた瀟洒な湯宿の風情を今に伝えている。お値段もサービスも「本館」と「佳松亭」の中間で、1万円台半ばくらいが、メインの価格帯のようである。
我々が泊まったのは、この「山荘」であった。近代的設備もいいが、風情も味わいたい。かといって、旨い飯にもありつきたい。そんな我々の要望に、山荘のコースはバッチリだったのである! 決して「佳松亭にするには予算が足りないから」とかそういうことではないので、誤解しないで頂きたい! みんな貧乏が悪いんや!
宿に着いたのが5時過ぎとあって、晩ご飯まであまり時間がない。さっくりと近所の公共温泉施設「四万清流の湯」を味わって帰ってみれば、時間ははやお食事時であった。新幹線とレンタカー以外、どこにも寄ってないのに。なんだこの弾丸ツアー。
夕食は部屋食。懐石料理である。
部屋に戻ってコタツに入り、食事の到来を待つ。昭和初期に建てられた宿とはいえ、メンテナンスはきっちりされており、部屋は清潔そのものである。設備も時代に即して換えられているようで、例えばトイレなどは、最新の水洗式に換えられていた。一方欄間などは、今ではなかなかお目にかかれないような細工がされていて、風流ですなあ、と目を細めつつ楽しんでいると、やがて女中さんが失礼しますと、扉をたたいた。
「食前酒の自家製梅酒から、どうぞ。まずは『箸附』と『寄盛』、『向附』でございます。箸附は蟹豆腐と(ry」
女中さんの説明から始まった食事であったが。
「……MADくん、MADくん」
「どーしました・MDさん」
「どうしよう。めちゃめちゃ旨い。つか、 食 べ た こ と が な い 味 が す る 」
そう。出てきたのは懐石料理だったのだが、これが噂に違わぬおいしさだったのである! 創作和食に近いんじゃないの?と思われるほど面白い、しかも手の込んだ料理であったが、共通しているのはどれもうまいということであった。
「まったく。・MDさんに食わすのがもったいないですな!」
「なにを言うか貴様! 俺のような伝統ある上方の人間が食べてこそ、懐石料理も本望というものではないか!」
「上方って、あんた奈良でしょうが!」
「京都より古い王城の地だぞ!? 歴史が違うのだよ歴史が!」
「あー、歴史ねえ。それより他に誇るモンのない、落ちぶれた奴らがよく言うセリフですなあ」
「ンだとー!? 千年の歴史を誇る我らから見れば、関東なぞド田舎なのだよ!」
「今はそっちが田舎だよ。つか、『掘ったらハニワ出てくるド田舎』程度にしか思われてねえよ!」
「うむ。それは間違ってない」
「認めるのー!?」
ちょうど食べ終わったのを外で見ていたかのように、絶妙のタイミングで2~3皿ずつ運ばれてくる料理達。馬鹿話を楽しみつつ、1時間ほどかけて食べ進む我らのかたわらで、夜は深々と更けていくのであった。続く!