某リゾートホテルのスパに行ってきたぜ!
前に仕事がらみで行ったことがあんだが、そん時受けたマッサージが凄くてねー。個室で専属のエステティシャンのおねーさんが、精油使ってゴリンゴリンと揉んでくれるんだが、終わった後、冬なのに身体がポッカポカ! しかもその後、1週間くらい身も心も軽かった。さすが一流ホテル。
値 段 も 一 流 だ け ど な 。
ええい、男には、ダメと分かっていてもやらねばならん時があるのだー! 明日からの地獄の5日間は、身体が元気なだけじゃダメ。脳みそフル回転の、前向きアグレッシブ状態が欲しいのさ! なお、今回のスパ代は、明日からの残業代が充てられる予定です! 5日分でようやくトントンですが!
盆明けの平日。さすがに今日は空いてるだろうと余裕をかまし、昼過ぎに電話をしたら、今日も予約は一杯とのこと。かろうじて2時が空いてるとこのことで、すぐさま予約を入れた。しかし、こんな昼日中から、あんな高級スパでノンビリマッサージなんぞ受ける奴が、そんなにいるのか。そうかー。はっはっは。なんだろう、この胸にこみ上げるどす黒い感情は?
SATSUGAIせよ! SATSUGAIせよ! DMC! DMC! デストローイ!と叫びつつ、俺は颯爽とホテルへと乗り付けた。チャリンコで。
「あのー、受付のお姉さん、自転車止める場所ってありませんか?」
「え? えええ? あ、あのあの、すぐベルボーイをやりますから!」
本日の教訓。
高 級 リ ゾ ー ト ホ テ ル に 駐 輪 場 は な い 。
駐輪場さがして、ホテルのまわり3周もしちゃったぜチクショウ。
みんな電車か車で来るそうです。ビックリだネ! そーいや、前に仕事できたとき、下の駐車場、ベンツやクラウン、ポルシェとか一杯止まってたなあ。フィットネスは、入会金21万円。年会費27万3000円で、3年ごとに更新料6万3000円だそうですよ。たけえよ! 家建つよ! 日本はいつからそんな格差社会に!
押しも押されぬ社会の底辺代表である俺様は、ホテルの警備員に撃ち殺されたりしないよう、道の端っこをコソコソ歩いて、なんとかスパへとたどり着いた。
今回選んだコースは、身体の疲れを芯からほぐす、ディープフリーコース。「筋肉深くまで働きかける強めのマッサージ。揉む、こねる、叩く、ストレッチなどの入った技法で、筋肉の疲れを和らげていきます。肩こりや、スポーツあとなどの筋肉疲労を解消したい方にもおすすめです。」とのこと。背面・脚裏面・足裏をガリゴリやってくれる、45分の「バック」コースと、全身をメキメキやってくれる70分の「基本」コースがあったが、ここは基本コースをチョイス。「どーせやるならとことんまで」が俺の主義だ。「毒をくらわばそれまで」とゆーやつだな! うむ、誤用の上間違っているいるいる。(エコー)
ちなみに前回受けたのは、アロマテラピー45分コースでした。「似合わん」とか「キモい」とか言うな。そんなん本人が一番思っとるわー!!
専属エステティシャンのおねーさんに案内され、奥の部屋で着替える。紙製のブリーフと短パン、そしてタオル地のガウンである。着替えて出てきたところで、奥の個室へと案内される。
やや薄暗い暖色の灯りに照らされた、木を多用した、高級だけど、どこかホッとするその部屋で、俺は紙製ブリーフいっちょになって、うつぶせになるよう指示された。しかし、女性の前で紙製ブリーフいっちょになるって恥ずかしいよな。しかもこの紙製ブリーフがけっこうコンパクトで、人によってはハミ出ちゃうんじゃないかと心配になるシロモノなのだ。なにがとは言いませんが。まあ、俺はまったくハミ出る心配がありませんでしたが。なにがとは言いませんが。
顔があたる部分がポッカリ空いて、息苦しくないようになってる顔のせ台(と言うのか?)に顔を載せ、俺は裸身を横たえた。きめ細かく艶やかな肌をさらしたその姿は、まな板の上のトドのようであったと、後世の歴史家は伝えている。
そして、施術が始まった。お姉さんが精油を手に取り、お手々でこね合わせて身体へと伸ばしていく。ぬるりとした感触を俺に与えて、手が俺の肌の上を滑っていく。オイルは、ホテルこだわりの『天然成分100%の“真の精油”として評価の高い、オーストラリアの「エッセンシャル・セラピュウティック社」アロマエッセンシャルオイル』だそうだ。サラダ油や紅花油で充分の安い身体なのにスイマセン。エコナどころか、ごま油でも充分おいしく召し上がって頂ける身体なのにごめんなさい。てゆーか、油なら身体の中にたくさん――
「いきますよー」(クニ☆)
「ギニャァァァァァ!!!!」
足が、足の裏がメガ痛え!! すいません! そう言えば前回来たとき、調子こいて「好み:強目」って書いたんでした! あの時も3秒でギブアップしたんです! え? それは聞いてるから中くらいの強さでやってる? 違うんです! 僕ヘタレなんです! あなたの予想を遙かに上回るヘタレなんです! 「好み:微弱」でお願いしますぅぅぅぅ!!!!111
足裏の土踏まずや背中の背骨あたりなど、なんだか異常に痛い部分があるんである。ここ2週間の過労だけではない。産まれてこの方、ずっと爛れた生活を送ってきたのだ。その35年分の不摂生が、身体の方々に蓄積されており、お姉さんのマジックハンドによって、それが分解されていく。そんな感じであった――って、ふおおおおお!!!!! らめえ! 首筋弱いの! らめえええええ!!!!
しかし、そんなマッサージにもいつしか慣れ、気づくと寝入っているんだから、我ながらいい根性である。熱くもなく、寒くもない部屋。のりん、のりんと伸ばされるオイルにともなって、ほぐれていく凝り。そして、下から薫る、ローズマリーとラベンダーのアロマの香り。
70分。
始まる前には長いと思えた時間は、気づくとあっという間に過ぎ去っていた。
「お疲れ様でした」
「いえ、お姉さんこそ」
短パンとガウンを纏うと、俺はレストルームへと案内された。ほの柔らかな間接照明に照らされ、さやさやと、壁を伝い落ちる水の音が響く部屋。俺を椅子に座らせると、お姉さんはかたわらの机に黒糖やアーモンドを練り込んだクッキー2枚と、ハーブティーを置いて、こう言った。
「だいぶ、お疲れですね。特に右側が、相当凝ってらっしゃいました」
「 バ ケ ツ か 」
「え?」
「いやなんでもないです」
「そうですか。足の裏を、握り拳で刺激してあげるだけでも、とても楽になりますから」
「握り拳? こうですか」
「ファイティングポーズをとってどうする」
そして、コース終了。いやあ、身体楽になった! 身体の奥の方がポカポカしてるし、何より肩と足がすごい軽い! 今なら、取りのように飛び立てる気がするよ! ほうら! ほうら!!(10cmくらいドスドス必死でジャンプしながら)
朝までは、筋の痛みがじくじくなってて、身体の奥に疲労がこびりついてて剥がれない、って感じがあったのに。本当に「詰まってたモノが全部キレイになった」って感じ! これで明日からも闘えますよ! どこまでも行けますよ! お前なら行けるさトムですよ! どこまでも遠くへ、ですよ! 地平線の彼方で素晴らしい冒険が俺を待ってるんですよ! うははー!って軽やかにチャリンコこいでたらですね。
タ イ ヤ パ ン ク し た 。
そこから家までは10kmはある距離で。
しかも道は坂道で。
チャリンコ押して帰るまで2時間もかかりやがって。
デ ィ ー プ フ リ ー コ ー ス に 連 れ て 行 っ て く れ る 人 募 集 中 で す 。